溶接検査の人員を半減できる、パナソニックが自動外観検査システムを発売:検査自動化(2/2 ページ)
パナソニック コネクティッドソリューションズ社は、スタートアップ企業のリンクウィズと共同開発を進めていた溶接外観検査ソリューション「Bead Eye」を2020年5月27日に発売する。パナソニックが開発した学習済みAIエンジンとリンクウィズの3次元データ解析技術を組み合わせることで、さまざまな溶接欠陥を自動で検査できる。
AIエンジンはパナソニックの豊富な溶接実績で学習済み
AI検査では、欠陥の種類や位置を判定し、良品比較検査では事前に設定した良品データとの形状比較に基づく一致率で良否を判定する。伊藤氏は「AIを用いた外観検査システムで最大の課題になっているのが、AIの学習に掛かる手間だろう。Bead Eyeではパナソニックでこれまで蓄積した豊富な溶接実績をあらかじめ学習させたAIエンジンを標準搭載している。またAIはアップデート可能なところも魅力だが、Bead Eyeでも当社で常にAIエンジンの精度を高めていき、それを適宜提供していくことを考えている」と説明する。
スパッタ痕などの微小な欠陥の検出を得意とするAI検査に加えて、リンクウィズが自動検査用ソフトウェア「L-QUALIFY」などで実績を積み上げてきた3次元データ解析技術による良品比較検査により溶接ビードの形状などに関する欠陥を検出できる。なお、検査判定にかかる時間は、検査精度などの設定にもよるが1カ所につきコンマ数秒〜数秒のレンジだという。
そして、検査判定結果とスキャンで得た画像データを併せて産業用PCなどに保存できるので、これらを溶接品質のトレーサビリティーなどに活用できる。例えば、溶接欠陥の多い箇所をデータから分析できるので、溶接条件を適切に見直して溶接作業などの前工程にフィードバックし、生産性と品質の向上を図れるというわけだ。
溶接検査の二重チェックが1人で行える
伊藤氏は、Bead Eyeの導入効果について「現在の溶接ラインの検査工程は、2人の作業員で二重チェックを行うのが一般的だ。ここにBead Eyeを導入すれば検査工程を1人で担当できるようになる」と強調する。つまり、溶接検査に必要な人員を半減させられるというわけだ。なお、検査の仕様によってはBead Eyeによる無人化も可能だが、スキャナーによる画像データの撮影を行えないような箇所の検査を含めて作業員を必要とする場面はまだ多いという。
リンクウィズとの提携を発表したのは2019年6月であり、そこから今回のBead Eyeの発表まで1年しかたっていない。新しい装置の開発期間としてはかなり短いが「パナソニック、リンクウィズの両社で開発に全力挙げてきた成果だと考えている」(伊藤氏)という。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 工場自動化のホワイトスペースを狙え、主戦場は「搬送」と「検査」か
労働力不足が加速する中、人手がかかる作業を低減し省力化を目的とした「自動化」への関心が高まっている。製造現場では以前から「自動化」が進んでいるが、2019年は従来の空白地域の自動化が大きく加速する見込みだ。具体的には「搬送」と「検査」の自動化が広がる。 - パナソニックが溶接現場の困りごと解決へ、浜松のスタートアップと協業
パナソニックは、自律型ロボットシステムソフトウェアを手掛けるスタートアップ企業のリンクウィズとの間で、溶接をはじめとする熱加工現場におけるプロセス改善に向けたソリューション開発に関する共同事業開発契約を締結したと発表した。 - 1分間540個のチーズをAIで検査、検査人員20人を省人化した六甲バター神戸工場
Q・B・B ブランドで知られる六甲バターは2019年10月に新たな製品検査装置として、AI(人工知能)を活用した最終製品検査システムをベビーチーズ工程において導入し、成果を生み出しつつあるという。2年半かけて導入したという。同社の取り組みを紹介する。 - 品質検査を自動化して全数検査に、ベンチャーの「光コム技術」が量産、普及へ
自動化された全数検査の“普及”へ――。ハードウェアベンチャーのXTIA(クティア、旧社名:光コム)は、ニコンやJUKI、双日、INCJから総額17億円を調達し、「光コム技術」の事業拡大に乗り出す。出資の内訳は、ニコンが8億円、INCJが6億円、JUKIが2億円、双日が1億円となる。 - 菓子の外観検査をAIで自動化、ロッテ狭山工場がYE DIGITALのサービス導入
YE DIGITALはAI画像判定サービス「MMEye」をロッテの狭山工場が導入したと発表した。チョコレート菓子などの外観検査をAIで自動化し、スマート工場化を推進する狙い。 - 韓国AIベンチャーの挑戦、少ない学習データで金属部品の外観検査精度99%を実現
韓国のAIスタートアップ企業であるSkelterLabsが、独自に開発したAIエンジンを柱に、日本国内での事業展開を見据えた活動を開始した。「2019 Japan IT Week 春 後期」にも出展し、韓国企業などに採用されている同社の技術を紹介。製造業をはじめAI活用を模索する日本企業に向けて、積極的に提案を進めて行く考えだ。