検索
ニュース

韓国AIベンチャーの挑戦、少ない学習データで金属部品の外観検査精度99%を実現人工知能ニュース

韓国のAIスタートアップ企業であるSkelterLabsが、独自に開発したAIエンジンを柱に、日本国内での事業展開を見据えた活動を開始した。「2019 Japan IT Week 春 後期」にも出展し、韓国企業などに採用されている同社の技術を紹介。製造業をはじめAI活用を模索する日本企業に向けて、積極的に提案を進めて行く考えだ。

Share
Tweet
LINE
Hatena
SkelterLabsのTed Cho氏
SkelterLabsのTed Cho氏

 韓国のAIスタートアップ企業であるSkelterLabsが、独自に開発したAI(人工知能)エンジンを柱に、日本国内での事業展開を見据えた活動を開始した。「2019 Japan IT Week 春 後期」(2019年5月8〜10日、東京ビッグサイト)にも出展し、韓国企業などに採用されている同社の技術を紹介。製造業をはじめAI活用を模索する日本企業に向けて、積極的に提案を進めて行く考えだ。

 SkelterLabsは2015年11月の創業。同社 CEOのTed Cho氏は、KAIST(韓国科学技術院)でAI技術を学んだ後、グーグル(Google)に入社。Google KoreaのR&D部門長を務めてからSkelterLabsを設立した。Cho氏は「2015年当時、AIは今ほど注目はされていなかったが、これからの困難な課題を解決していく上で、AIが最も重要な技術になると考え起業した」と語る。

 数人で創業した同社だが「現在は、グーグルやサムスン、LGなど出身の優秀なエンジニアやリサーチャーが50人以上在籍している」(Cho氏)という。また、SKテレコムやロッテ、現代自動車グループのマーケティング&コミュニケーション企業など、数多くの韓国企業とのパートナーシップを結んでおり、創業から約3年強で大きな成果を収めつつある。

特許取得技術により少量データで高精度な外観検査エンジンを実現

 SkelterLabsが提供するのは、同社が注力する3つの分野に対応するAIエンジンである。Cho氏は「機械学習や深層学習(ディープラーニング)といった基盤技術があった上で、コアAI技術としているのが『コンテキスト認識』『ビジョン』『会話』の3つになる。このコアAI技術の応用事例となるのが、コンテキスト認識からは『超個人化エンジン』、ビジョンからは『外観検査エンジン』、会話からは『会話エンジン』だ」と語る。

SkelterLabsのコアAI技術と応用事例
SkelterLabsのコアAI技術と応用事例(クリックで拡大) 出典:SkelterLabs

 日本国内の製造業向けに提案しているのが、大手自動車メーカーのサプライヤーによる検証も進んでいる外観検査エンジンだ。画像データと機械学習や深層学習を組み合わせて、正常品と欠陥品を選別する検査自動化技術の開発は、国内でも多くの企業が取り組んでいることもあり、それほど特別とはいえなくなっている。Cho氏は「外観検査エンジンを開発する上で課題になることが2つある。1つは、欠陥品のデータが少ないことだ。自動車業界をはじめ、製造業は欠陥品を出さないような生産活動を行っており、一般的な機械学習や深層学習に必要十分な量の欠陥品のデータがあるわけではない。もう1つは、カメラで撮影した画像データを基にした検査では、対象物が金属や光沢物の場合、表面の反射が外乱になって高精度な検査が行えなくなることだ」と説明する。

 SkelterLabsの外観検査エンジンは、これら2つの問題を解決できるという。「金属表面が含まれた自動車部品のスクラッチの検査で99%の欠陥検出率を実現した。この外観検査エンジンの学習では、正常品データを数百、欠陥品データを約50使っただけだ」(Cho氏)。なお、この外観検査エンジンのベースになる技術には、検査対象を複数の部分イメージに分割してから、この部分イメージを四角形のパッチイメージに変換し、そこから効率的に欠陥を検出するという特許取得技術が生かされている。

SkelterLabsの外観検査エンジンに用いられている特許取得技術の概要
SkelterLabsの外観検査エンジンに用いられている特許取得技術の概要(クリックで拡大) 出典:SkelterLabs

 Cho氏は、今後の日本国内での事業展開について「日本でのビジネスパートナーを決められるように議論を重ねているところだ」と述べる。また、AIスタートアップは日本国内にも多数あるが「AI市場は極めて大きく、今後の成長も期待できるので、とがった技術を持った企業同士で互いに補完し合っていけるのではないか。そういった形で、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon.com)に代表されるITジャイアントに対抗していきたい」(同氏)としている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る