精度や静粛性に優れた超高精度軸受の量産開始、精密加工機や半導体製造装置向け:FAニュース
ジェイテクトとダイベアは、超高精度軸受「PRECILENCE」を開発した。精度、寿命、静粛性などにおいて従来品を上回る「P2」軸受で、量産を開始している。
ジェイテクトとダイベアは2020年4月13日、超高精度軸受「PRECILENCE(プレシレンス)」を開発したと発表した。PRECILENCEとは、PRECISION(精度)とSILENCE(静粛)を1つにした超高精度軸受のブランド名で、今後シリーズで展開する。精密加工機メーカー、半導体製造装置メーカー、宇宙機器産業、精密測定器メーカーなど向けで、既に量産を開始しており、2025年に20億円の販売目標を掲げる。
工作機械の高精度スピンドル用軸受は、ドイツDIN規格の精度等級「P4S」が広く使用される。PRECILENCEは精度等級「P2」となり、軸受の5つの基本性能「精度よく回る(精度)」「静かに回る(静粛性)」「速く回る(高速性)」「軽く回る(低トルク)」「長く回る(長寿命)」の全てにおいてP4Sより優れている。
軸受構成各部品の精度を全面的に見直し、回転精度を従来品の約4分の1に高めた。また、転がり表面を滑らかに仕上げるなどして振動値を約2分の1に抑えた。軌道輪には強靭な高窒素ステンレス鋼を採用し、最高回転速度が約30%向上。転がり運動の阻害要因を大幅に取り除いたことで、回転トルクを約30%低減した。さらに、大きな玉径のセラミックスにより、寿命を約2倍延ばすことに成功した。
スピンドル組み付け時には、組み付け性と回転精度が向上している。軸受の回転精度が高いため、スピンドルの振れ精度の調整もほとんど必要なく、軸の振れ量1μm以下を達成した。また、3万min−1回転時の軸の振れ量を従来品より2分の1に抑え、最高回転速度は35%向上した。
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