AIを活用し、フレキシブル透明フィルム開発の実験回数を25分の1以下に低減:FAニュース
産業技術総合研究所は、AIを活用することで、フレキシブル透明フィルム開発の実験回数を従来の25分の1以下に低減した。相反する複数の要求特性がある機能性材料開発への応用展開が期待できる。
産業技術総合研究所は2020年4月13日、AI(人工知能)を活用し、フレキシブル透明フィルム開発の実験回数を従来の25分の1以下に低減したと発表した。新エネルギー・産業技術総合開発機構、先端素材高速開発技術研究組合、昭和電工との共同成果だ。
フレキシブル透明フィルムの開発において、要求特性を満たすポリマーの探索にAIを活用した。まず、27種類のフィルムを作成し、その原料の分子構造、配合比などの化学的な情報を独自の手法で説明変数に落とし込む。目的変数には相反する換算透過率、破断応力、伸びの3項目を選択し、その実測データをAIに学習させた。
さらに、多数の分子構造データを用意し、偏差値概念を導入したAIに3項目が等しい割合で最大となるフィルムの配合を予測させ、その配合の通りにフィルムを作成して物性値を評価。同様に27種のフィルムのデータを実測した熟練研究員が、自己の知見に基づき作成したフィルムの物性値と比較した。
その結果、AI予測の配合で作成したフィルムの物性値は27種のフィルムの物性値を超えるだけでなく、熟練研究員が作成した25種類のフィルムの物性値よりも優れていることが判明した。
以上のことから、並立しにくい物性を求める開発にAIを用いることで、研究者の知見に基づく実験に比べて実験回数を25分の1以下に削減でき、かつ研究者の経験知を超える開発も可能であることを実証した。これにより、相反する複数の要求特性がある機能性材料開発への応用展開が期待できる。
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