データ分析と長期間運用に対応する大容量ストレージ搭載産業用コントローラー:FAニュース
東芝インフラシステムズは、産業用コントローラーの新モデル「ユニファイドコントローラー Vmシリーズ typeS」の販売を開始した。情報システムと制御コントローラーが共存しており、劣悪な環境でも高度なデータ分析と長期間の運用が可能だ。
東芝インフラシステムズは2020年3月25日、産業用コントローラーの新モデル「ユニファイドコントローラー Vmシリーズ typeS」の販売を開始した。AI(人工知能)分析が可能な高性能CPUや大容量のメインメモリ、データを長時間保存できる大容量ストレージを搭載する。
ネットワークを冗長化して、故障率を低減するような部品を選定し、マージン設計や耐ノイズ性、耐環境性を確保するなど、工場の設備稼働率を高める技術が盛り込まれており、システムの制御、情報用プラットフォームとしてエッジコンピューティングに活用できる。パルプや鉄鋼、金属、上下水道、電力、ガスなど幅広いシステムに適している。
また、コントローラー上に導入した仮想化技術で、情報システムと制御コントローラーを共存させている。これにより、工場設備の現場など、使用環境が劣悪な状況でも高度なデータ分析と長期間の運用ができるCPS(Cyber-Physical System)プラットフォームとなる。
計測、制御に関わる従来のIoT(モノのインターネット)システムは、設備に複数の高精度センサーを取り付け、専用ネットワークを用いてクラウドで処理する仕組みになっていた。同製品はコントローラー上でセンサー情報を蓄積し、解析できるため、クラウドとの通信が必要最小限に抑えられる。また、共有メモリにて制御と情報処理のデータを交換するため、専用ネットワークを設ける必要がない。
拡張性に優れ、PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラー)1台に相当する制御システム1つを、1ユニットで複数システム運用できる。シングルユニットは最大2システム、マルチユニットでは最大4システムに対応する。なお、同製品のマルチコントローラーは、ユニット内部でコントローラー間通信ができるため、制御盤に外付けする通信機器は不要だ。
演算性能も高速化している。コンピュータ機能を共存させながら0.5ミリ秒という高速定周期タスクにより、現場の機器を高精度に制御する。命令語処理能力は、アプリケーションによっては、従来のnvシリーズの3倍以上となる処理性能を持つものもある。
複数ユニット間でのコントローラー間の伝送、HMI(Human Machine Interface)とのデータ伝送は、イーサネットの他、同社のリアルタイムイーサネット(IEC 61784-2/61158 TCnet)伝送技術を用いる。スキャン伝送方式によりデータの伝送効率が高く、ネットワークの冗長化ができる。
IEC61131-3で規定される標準的な4言語をサポートし、プログラムの標準ライブラリを提供するなど、ユーザーが設計したプログラムを移植しやすくしており、エンジニアリング資産を効率的に使える。ユーザーは独自のプログラムを関数化、部品化できる。
さらに、クライアントサーバ方式で、複数のエンジニアが1つのシステムをエンジニアリングできる仕組みを提供する。最大128台のクライアントから、サーバ本体にある1つのシステムを共有しつつ、エンジニアリングできる。
頑健性はこれまでの製品同様で、制御機器に求められる0〜55℃、10〜95RH%に対応する。同社の産業用コントローラーVおよびnvシリーズのプログラムを流用でき、設備機器の入出力に関わるI/Oも同種別のものを使用できる。この他、従来コントローラーの長期安定供給、長期保守サービスも継承している。
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