従来の人工知能に実装されていない、脳内のシークエンス入力を発見:医療技術ニュース
東京大学は、海馬ニューロンが受けるシナプス入力を大規模に可視化することで、近くのシナプスが特定の順番で反復入力を受けることを発見した。
東京大学は2020年2月13日、海馬ニューロンが受けるシナプス入力を大規模に可視化することで、近くのシナプスが特定の順番で反復入力(シークエンス入力)を受けることを発見したと発表した。同大学大学院薬学系研究科 教授の池谷裕二氏らの研究成果となる。
研究グループは、「sharp wave ripple(SW)」と呼ばれる脳波の発生時に、海馬CA1野のニューロンが受け取るシナプス入力の時空間パターンを、海馬培養スライスを用いて大規模に可視化した。その結果、特定のスパインが特定の順番で反復入力を受けることを明らかにした。
スパインとはシナプスの一部で、樹状突起から突出する構造を持っており、興奮性シナプス入力を受け取る。また、局所に生じるシークエンス入力は、細胞体に向かう側、または離れる側の方向性を持つことも示された。このシークエンス入力はSW発生時に多く観察され、神経回路にはシークエンス入力を積極的に生み出す微小回路構造が存在すると考えられる。
次に、シークエンス入力に含まれるスパインが、樹状突起のどの位置にあるのか調べた。その結果、シークエンス入力に組み込まれるスパインは、互いに近接した位置に存在していた。特に、10μm以内のスパインが組み込まれやすかった。
脳を構成するニューロンは、シナプスを介して他のニューロンに情報を伝える。さまざまな情報は、ニューロンの組み合わせとその活動パターンでコードされると考えられている。こうした活動パターンは「発火シークエンス」と呼ばれるが、シナプスレベルでどのように伝達されるかは不明だった。今回発見したシークエンス入力は、従来の人工知能には組み込まれていないため、この現象を実装することで、より脳に近い機械学習の構築につながることが期待される。
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