モデルベース開発は、自動車メーカーと大手サプライヤーだけのものではない:今だからこそ!モデルベース開発入門(2)(3/3 ページ)
モデルベース開発は、自動車メーカーやティア1サプライヤーだけのものではありません。ティア2以下のサプライヤーや中小企業にも無関係ではないのです。また、モデルの活用を「やらなければならない」と思うのではなく、自分のためでもいいのです。
まずは「自分のため」を考えよう
何よりもまず、自分のためを考えてみるといいだろうな。モデルベース開発をやると自分がうれしいんだ、という目線がいいな。
車体骨格の金型をやっているベテランが「誰かに言われてCAEをやるんじゃない。試作してやり直すのが大変で嫌だから事前にCAEで懸念をつぶすんだ。ラクしたいんだよ」と言っていたことがあった。
自分がラクするためにやるって、いいと思わないか。言われて受け身でやるより、ずっと真剣に活用したくなる。
えっ、そんな動機でもいいんですか!
前に会った時に、モノを作って検証して、後からいろいろと分かったり言われたりしてやり直すのが大変だって言ったじゃないか。バーチャルで失敗して、不具合を見つけられたら、八木崎はうれしいんじゃないか。どうやってモデルを使うと自分がうれしいか、考えてみたらどうだ。
バーチャルで不具合が見つかったらすごくうれしいです。でも、どうやって僕の仕事にモデルを使うか……うーん。
エンジニアリング会社の人で、相談に乗ってくれそうな心当たりがあるから、紹介するよ。
本当ですか! ありがとうございます!
新しいことを始めるのは大変だけど、面白い取り組みになっていくと思うよ。全く新しいクルマをどう作るか、とかね。
EVって、モーターとバッテリーの組み合わせでいろいろなことができるだろ。複数の部品を組み合わせたときに1台のクルマとしてどうなるか考えたり、複数の車種のラインアップを一括で企画したりするときにモデルを活用している自動車メーカーがあるんだ。自動車メーカー数社とサプライヤーも参加して、そういう開発をやっていると聞いた。
新しいクルマを新しいやり方で作るのは、おれはとても楽しそうに見えるよ。
「やらなきゃいけない」って思うとプレッシャーですが、「自分のため」って考えると、僕すごくやる気出てきました。「一歩踏み出して、その楽しそうな輪に入りたい!」っていうのもポジティブですね。
その調子だ! モデルをつなげるための環境は整いつつあるから、動き出せばいろいろ見えてくるんじゃないか。そういえば、「SURIAWASE2.0」って調べたか?
少し調べてみました。経済産業省が、日本全体でモデルベース開発を活用するたもの研究会を立ち上げたんですよね。モデルをつなげるインタフェースのガイドラインや、ガイドラインを基にした車両性能シミュレーションモデルの資料が見つかりました。
そういう情報も踏まえつつ、今回開発する部品や、会社の様子をあらためて見てみるといいんじゃないか。どんな部品をどんなクルマ向けに作るのか聞けないから、これ以上の具体的な話は、現時点では難しいしね。
まずは「自分がうれしい」を忘れず動こう。さっき話したエンジニアリング会社の人の連絡先、これだよ。
わあ! 担当の方は女性なんですね! 楽しみだなあ!
八木崎は、自分の仕事にモデルを取り入れると何が変わるか、わくわくしていた。また、モデル活用の壮大な構想に身構えつつも、自分の会社の現状や、亜細亜自動車と開発する次期モデル向けの部品に対して、今までとは違う目線で関心を持ち始めた。
(次回へ続く)
企画:自動車技術会 会誌編集委員会
企画監修:白坂成功氏(慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 教授)
企画協力:自動車産業におけるモデル利用のあり方に関する研究会(経済産業省主催)、
自動車技術会 国際標準記述によるモデル開発(MBD)技術部門委員会、
自動車技術会 自動車制御とモデル研究部門委員会
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