自動運転車向けLiDARの開発が過熱、新方式の提案が続々と:オートモーティブワールド2020(2/2 ページ)
レベル4以上の自動運転システムにおいて重要だとされるLiDAR。本稿では「オートモーティブワールド2020」に出展したLiDARメーカーの最新技術を紹介する。
独自の走査パターンにより
中国ドローン大手DJIの子会社であるLivoxのブースでは、最大500mの遠距離検出が可能な「Tela-15」が展示されていた。
最大の特徴は、レーザーの走査パターンに、独自開発した非反復走査方式を採用した点だ。従来のLiDARでは水平リニア走査方式が採用されている。これはレーザー光を水平かつ平行に照射してスキャンを行う方式だが、100m以上の遠距離にある対象物に対しては、スキャン時の点群密度が減少してしまい、物体検出の精度が低下するという問題があった。
一方、非反復走査方式の場合は、非水平型の独特な形を描く走査パターンにより、視野角(FOV)内の対象物を漏れなくスキャンすることが可能だ。点群密度はレーザーの積分時間を調整することで増減する。「積分時間を1秒に設定すると、FOV内の対象物をほぼ100%、漏れなく検出できる。自動運転において実用的な積分時間とされる0.1msの設定でも、他社製品より正確な検出が可能だ」(担当者)。
今後は自動運転システムの開発を手掛ける企業やソフトウェアベンダーとの共同開発を行う他、セキュリティ分野での活用や、農業機械や建設機械、AGV(無人搬送車)向けの開発にも取り組んでいく予定だという。Tela-15の発売日は、2020年4月を予定する。
LiDARに関する展示で最も賑わっていたのは、やはりというべきか、LiDAR開発の最大手企業と目されるベロダイン(Velodyne)だった。Googleなどの自動運転車に採用された同社のLiDAR製品は注目度が高く、周囲のブースと比べると、ひときわ多くの来場者を集めていたように思う。
だが、会場にはベロダインの他にも、今回記事内で紹介した通り、LiDAR製品を手掛ける企業が多数出展していた。各企業とも、精度向上をはじめ、量産化を視野に入れ、独自の技術開発に取り組む。自動運転車の実用化を目前に控え、今後、LiDARの開発競争がどのように進展していくか。目の離せない状況が続きそうだ。
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インフラの世界ってぜいたくだな、というのが正直な感想です。