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ダイソンEV撤退をケーススタディーとして考える和田憲一郎の電動化新時代!(35)(4/4 ページ)

EVを開発すると宣言し、撤退した案件としては、投資額や雇用人員ともダイソンがこれまで最大規模であり、この撤退の真因に迫ることは、今後のEV開発に極めて重要ではないかと考えた。あくまで筆者の見立てであるが、元EV開発の経験からダイソンEV撤退をケーススタディーとして、EV開発の困難さおよび事業の難しさについて考えてみたい。

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将来のモビリティ開発の在り方は

 このように考えてくると、モビリティ、特にEV開発は筆者が携わっていた頃に比べて第2世代に入ってきていると思われる。幾つか例に挙げる。まず、モビリティはパワートレイン価値より、コネクテッド価値に比重が傾いている。よくEVは電池が重要であるといわれるが、コモディティ化しつつあり、むしろAI(人工知能)やビッグデータを使った自動運転機能や、IoT(モノのインターネット)などに投資のリソースが移りつつある。また、電池は自社生産もしくは自陣営にこだわらず、価格が安くて信頼できるところから調達する動きが進む。

 基幹部品はさらなるモジュール化が進む。パワートレインを統合したe-Axle、さらにフロア下のプラットホームを全て統合した「スケートボード方式」と呼ぶ大型モジュール化が増加するとみている。スケートボード方式について、米国の新興自動車メーカーのRivian Automotive(リヴィアン)はそのプラットホーム上にSUV、ピックアップ、配送用バンなどの装着を想定している。


図表3:リヴィアンのスケートボード方式(クリックして拡大) 出典:リヴィアン

 自動車メーカーは運転席、助手席を重要視してきたが、ライドシェアの普及に伴って用途によっては後席重視のモビリティが出現する。中国の滴滴出行は31社とともに洪流連盟(Dアライアンス)を形成しており、ライドシェア専用の新エネ車を2030年までに1000万台開発することを表明している。購入から利活用への動きが広がると、耐久性向上が求められる。不特定多数の人が利用するモビリティには、これまでの数倍の耐久性が求められる。また故障が生じる前にIoTやブロックチェーンなどを活用した事前の故障診断機能が必須となる。

 上記方向性から考えるに、IT企業やライドシェアを提供する企業が自動車メーカーと連携し、場合によってはIT企業が力関係の上位にくる形態も増加する。

 最後に、まだ利害関係者が多いためダイソン氏は説明できないのかもしれないが、いつか、自動車業界以外からEVビジネスに挑戦した先達者として、撤退を決めた背景を明らかにしていただく日を期待している。

筆者紹介

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和田憲一郎(わだ けんいちろう)

三菱自動車に入社後、2005年に新世代電気自動車の開発担当者に任命され「i-MiEV」の開発に着手。開発プロジェクトが正式発足と同時に、MiEV商品開発プロジェクトのプロジェクトマネージャーに就任。2010年から本社にてEV充電インフラビジネスをけん引。2013年3月に同社を退社して、同年4月に車両の電動化に特化したエレクトリフィケーション コンサルティングを設立。2015年6月には、株式会社日本電動化研究所への法人化を果たしている。


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