歯周病患者の歯茎で脳内老人斑成分が産生していることを発見:医療技術ニュース
九州大学は、ヒトの歯周病の歯茎と歯周病因菌のジンジバリス菌(Pg菌)を投与したマウスの肝臓で、脳内老人斑成分のアミロイドβ(Aβ)が産生されていることを発見した。
九州大学は2019年11月14日、ヒトの歯周病の歯茎と歯周病因菌のジンジバリス菌(Pg菌)を投与したマウスの肝臓で、脳内老人斑成分のアミロイドβ(Aβ)が産生されていることを発見したと発表した。同大学大学院歯学研究院 准教授の武洲氏らと、中国の吉林大学との共同研究による成果だ。
研究グループは、まず、ヒト歯周組織を用いた解析を実施。その結果、アルツハイマー型認知症の特異的な脳内病態であるAβ(Aβ1-42とAβ3-42)老人斑が、歯周病患者の歯周組織におけるマクロファージに局在していることが分かった。また、Pg菌を3週間投与した中年マウスの肝臓において、IL-1β発現マクロファージにAβが誘発していることを確認した。
肝臓におけるAβ代謝を解析したところ、Pg菌の投与は、Aβ代謝酵素には影響を与えず、Aβ産生酵素であるカテプシンBを増大させることが分かった。このことから、歯周病菌によって肝臓に炎症を起こしたマクロファージが、Aβを産生することが示唆された。
さらに、Pg菌に感染した培養マクロファージでは、炎症反応に関与するIL-1βとAβの産生が誘導され、Aβの貪食能力が著しく低下していた。これらの産生誘導は、カテプシンB特異的阻害剤により抑制され、Aβの貪食能力も改善した。つまり、カテプシンBが、歯周病菌により引き起こされた炎症マクロファージにおけるAβ産生の原因酵素になると考えられる。
これらの成果から、カテプシンBが、歯周病と関連した脳と全身における炎症やAβ産生・蓄積に関与することが明らかになった。今後、その制御によって歯周病によるアルツハイマー型認知症の発症と進行を遅らせることが期待される。
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