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金属板を「切る・抜く・曲げる」――似ているけど違う精密板金加工とプレス加工ママさん設計者が教える「設計者のための部品加工技術の世界」(2)(3/3 ページ)

設計者でも知っておくべき部品加工技術をテーマに、ファブレスメーカーのママさん設計者が、専門用語を交えながら部品加工の世界を優しく紹介する連載。第2回は、金属板を“切る・抜く・曲げる”という点で共通するが、実際には異なる加工方法として知られる「精密板金加工」と「プレス加工」について取り上げる。

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プレス加工の概要

 精密板金加工で試作を行い仕様が確定したら、量産時にはプレス加工に移行することになります。以下、プレス加工の概要にも触れておきます。

 プレス加工は、材料を金型で打ち抜くだけの単純なものから、穴をあけ、折り曲げて、最後に抜き落とすといった複数の工程を経て1つの部品を作る複雑なものとに大別できます。

 ここで、基本として覚えておきたい2つのプレス金型「単型」と「順送型」について紹介します。

1.単型(たんがた)

 単型とは、抜き、曲げなどの工程のうち、単独の工程で用いる金型のことで、「単発型」とも呼ばれます。単発型1つだけで完結する加工を「単発プレス」といいます。

2,順送型(じゅんそうがた)

 順送型とは、抜き、曲げなどの工程を、1つの型内に等ピッチで順番に配置した金型です。材料は長いコイル材を使用します。レベラーを通して巻癖や歪み(ひずみ)を除去してから送り装置によって、プレス機械1回転ごとに1ピッチ分のコイル材を送って、次の工程へ“順送り”していきます。材料を“順送り”することから順送型と呼ばれるようになりました。順送型による加工を「順送プレス」といいます。

生産性の高いプレス方式とは?

 部品形状が複雑で工程数の多いプレス部品の場合、一度のプレスで完了してしまう順送プレスと1金型1工程の単発プレスとでは生産能力が異なります。しかし、工程の異なる単発型をあらかじめ順番に並べておき、1つ目の工程でプレスが終わったものを次工程の金型に搬送する方式を用いれば生産性は上がるはずです。

 生産性の高いプレス方式の1つが「トランスファープレス」です。トランスファープレスは、プレス本体と同期した搬送機構を持ったプレス機械で、金型は工程別に用意した単発型の集合です。一般的な順送プレスに比べて、外形形状が大きく変わる絞りなどの成形に強く、歩留まりも良いとされています。

 もう1つの「タンデムプレス」とは、いわゆる「プレスライン」です。ロボットや専用の搬送装置を備え、工程別に用意されたプレス機同士の間でワーク(加工中のプレス製品)を搬送しながら、流れ作業的にプレス加工を行うものです。

 図10に主要なプレス加工方式をまとめてみましたので、参考にしてください。

主要なプレス加工方式
主要なプレス加工方式[クリックで拡大]


 次回は、金属のプレス加工とは一味違う「抜き型」の世界に触れます。お楽しみに! (次回に続く)

Profile

藤崎淳子(ふじさきじゅんこ)

長野県上伊那郡在住の設計者。工作機械販売商社、樹脂材料・加工品商社、プレス金型メーカー、基板実装メーカーなどの勤務経験を経てモノづくりの知識を深める。紆余(うよ)曲折の末、2006年にMaterial工房・テクノフレキスを開業。従業員は自分だけの“一人ファブレス”を看板に、打ち合せ、設計、加工手配、組み立て、納品を一人でこなす。数ある加工手段の中で、特にフライス盤とマシニングセンタ加工の世界にドラマを感じており、もっと多くの人へ切削加工の魅力を伝えたいと考えている。

・筆者ブログ「ガノタなモノづくりママの日常」


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