金属板を「切る・抜く・曲げる」――似ているけど違う精密板金加工とプレス加工:ママさん設計者が教える「設計者のための部品加工技術の世界」(2)(2/3 ページ)
設計者でも知っておくべき部品加工技術をテーマに、ファブレスメーカーのママさん設計者が、専門用語を交えながら部品加工の世界を優しく紹介する連載。第2回は、金属板を“切る・抜く・曲げる”という点で共通するが、実際には異なる加工方法として知られる「精密板金加工」と「プレス加工」について取り上げる。
切断、穴あけを行う外形加工、曲げ加工
展開図から加工データを作成したら、レーザー加工機、あるいはタレットパンチプレスを使い、切断、穴あけといった金属板の外形加工を行います。参考までに、図6に示した加工機の加工範囲は2500×1270mmで、いわゆるシハチ(4尺×8尺)板をそのまま乗せて加工できるものです。
最近では、より高効率な外形加工ができる、パンチレーザ複合加工機を導入する精密板金加工会社も増えています。この加工機は切断、穴あけだけではなく、従来別工程だったバーリングやタッピングなども統合し、全てを1台でこなすことが可能です。
通常のレーザー加工機は、赤外線を発振し、炭酸ガスを増幅媒体としてそのエネルギーを材料に吸収させることで切断していく、CO2レーザーを採用しています。このデメリットは、赤外線を跳ね返す力を持つ純アルミや銅などの非鉄金属が加工できないことです。その対策として、かつてはタレットパンチによる切断が主流でしたが、近年では、赤外線よりも短い波長のエネルギーを使い、集光性に優れた光ファイバーを増幅媒体に用いた微細ファイバーレーザー加工機の使用が増えています。
切断工程の次は、曲げ工程です。ベンダーの制御はNC(数値制御)化されていても、作業は図8のように1つずつ人間の手で行います。ですから、月産数千個〜数万個などという数量を精密板金加工で対応することは現実的ではありません。それほどの数量が必要であれば、正規に金型を製作してプレス加工へ移行すべきです。
精密板金加工のおおまかな流れをまとめると以下のようになります(図9)。
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