日本信号の若手設計者が推進した自動設計ツールの整備と技術者下克上:SOLIDWORKS WORLD JAPAN 2019(4/4 ページ)
標準化やモジュール化を進めても、時間の要する個別設計はなくならない。顧客の要望に応え、いち早く製品を市場に投入するにはどうしたらよいか。こうした課題に対し、日本信号は若手設計者を中心に自動設計ツールの整備を進め、手間の掛かる都度設計業務の効率化に取り組む。
数値、業務改革、教育の視点で見るツール導入の効果
組み合わせ設計ツールとテンプレート設計ツールを整備したことで、どのような効果が得られたのだろうか。
まず数値的な効果として、設計依頼を受けてから出図するまでの作業工数が約50%効率化されたという。ここに関しては70%の効率化という最終目標を掲げており、喜多氏は「自動化の範囲を見直すことで、まだ改善の余地があると考えている」と述べる。
設計業務改革の観点では、これまで設計依頼を受けても前例主義により、過去の経験や勘、これまでの設計資産に頼ろうとする傾向にあったが、ツール導入により、“勘と経験による設計からの脱却”に成功したという。「ツールを活用することで、若手設計者でも設計ルール、設計基準を満たすモデルや図面を作成できるようになった。ツール自体に必要な設計ノウハウが詰め込まれているので、基本を押さえた設計が可能となる。若手設計者の活躍、台頭にもつながり、技術者の下克上も起こり得るだろう」(喜多氏)。
このように、設計者教育の面でもツール導入は大きな効果を発揮。従来、ベテラン設計者に確認を取りながら経験を積んでいくことで、何年もかけて、知識やノウハウを習得していくのが当たり前だったが、「若手設計者が1年で戦力化できるまでになった」(喜多氏)と、異動後1年間で戦力化した武井氏がまさにその好例であると強調した。
そして、これらの導入効果により、「従来以上に顧客要望に応えることが可能となり、設計者の働き方改革も促進され、設計者自身の業務にも余裕が生まれるようになった」と喜多氏は述べる。
今後の展望と自動化に向けて重要なこと
組み合わせ設計ツールに関しては、まだ対応していない非モジュール製品について標準化、モジュール化をさらに推進し、適用の拡大を目指すという。テンプレート設計ツールに関しても、未対応製品の仕様、設計ロジック、オプションなどを整理し、適用の拡大を図りたい考えを示す。さらに、現在のツールの手動部分を自動化することで、より高次元の効率化を目指すとする。
講演の最後、設計の自動化に取り組む際のポイントとして、喜多氏は「勘や経験に依存した設計から自動設計に向かうためには、標準化やモジュール化の検討時に整備する製品仕様、設計フロー、設計ルール、設計ロジックが欠かせない。これらが自動設計時の入出力仕様、マスターモデル、機能仕様、マニュアルの材料となる。また、プロジェクトの推進には、適切な環境整備が不可欠だ。通常業務から隔離した自動化プロジェクトの専任担当者を任命し、短い間隔の定期的な活動にするなど、強力な推進体制を構築すべきだ。その際、大きな成長が期待できる若手設計者を任命することを強くオススメしたい」と語る。
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