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インタビュー

急速な合従連衡と混迷極まる地政学的リスク、自動車業界のゆくえを聞く製造マネジメント インタビュー(2/2 ページ)

自動車業界の再編が加速している。直近の動きを振り返ると、2019年10月30日には日立オートモティブシステムズ、ケーヒン、ショーワ、日信工業が経営統合を発表。続く同月31日にはFCAとGroupe PSAが、さらに続く11月1日にはアイシン精機とアイシン・エィ・ダブリュが経営統合に向けて基本合意したことを相次ぎ発表した。

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世界経済に複数のリスク、日系OEMに影響は

 世界経済は勢いを失いつつあり、米中貿易摩擦や英国のBrexit(EU脱退)、米国通商拡大法232条に基づく関税発動といった地政学的リスクも自動車産業に暗い影を落とす。これら地政学的リスクは日系OEMの生産面にどのような影響を与えるのだろうか? Fulthorpe氏は深刻な影響を及ぼすものはないとの見立てを示している。

 「米中貿易摩擦について、われわれのベースシナリオでは両国関係はこれ以上悪化しないと見ている。ワーストケースとして米国が中国からの輸入品に全て関税を発動する可能性もあるが、これはなかなか起こらないだろう。米国もインフレが加速する恐れがあるためだ」(Fulthorpe氏)

 Brexitについて、Fulthorpe氏は「確かに今イギリスへの投資が落ち込んでおり、消費者心理も沈んでいる」と指摘。日産はSUV「エクストレイル」の次期モデル生産について英国サンダーランド工場での生産計画を断念し、ホンダは同国生産から撤退すると発表するなど、日系OEM各社は欧州生産体制の再構築を迫られている。その一方で、「Brexit単体の事象をリスクとしてみた場合、その影響がEU外に波及するとは見ていない」とし、「日EU経済連携協定によって、日本からEUへの自動車輸出でかかる関税は段階的に撤廃される。『合意なき離脱』となった場合でも、日系OEMへの影響は比較的限定されるだろう」と指摘した。

 そのうえで、米国通商拡大法232条発動による日本製自動車、部品への追加関税リスクは「先日の日米首脳会談によってリスクは下がった。米国の(米国通商拡大法232条における)メインターゲットは中国で、その次はEUだからだ」と見る。しかし、「仮にこの問題が再燃した場合、日系OEMは日本からUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)に生産をシフトせざるを得ない」とし、継続して状況を注視すべきだと話した。

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