Arm「Custom Instruction」の衝撃、RISC-Vへの徹底抗戦を貫く:Arm最新動向報告(6)(3/3 ページ)
2019年10月6〜8日にかけてArmが年次イベント「Arm TechCon 2019」を開催した。本連載では、同イベントの発表内容をピックアップする形で同社の最新動向について報告する。まずは、Armのこれまでの方針を大転換することとなった、ユーザーに独自命令を組み込むことを許す「Custom Instruction」について紹介しよう。
「早く提供しないとRISC-Vにやられる」
現時点では、Cortex-M33コアからCustom InstructionへのI/Fがどんなものか? といった情報はまだ無いのだが、概念的には図11みたいな形になるかと思う。
これはSiFiveのRISC-VベースのコアのCustom Instruction(SCIE)の構成だが、要するにコア部から命令とパラメータを渡し、結果を受け取るという仕組みである。SCIEの実装も、上で説明したCustom Instructionと似た条件(ただしレイテンシは2サイクルまでに制限されている)になっているし、さらに言えばMIPS ASEs(Application Specific Extensions)というカスタム命令拡張もほぼ同じである。要するに実装としてはごく当たり前ものになると思われる。
ところで冒頭の話に戻ると、なぜArmは今Custom Instructionの対応を行ったか。これについてはもちろんシガース氏とかは「ユーザーメリットにつながるから」という建前は崩さないが、エンセルグエイ氏との質疑応答の中で「早く提供しないとRISC-Vにやられちゃうから」という返事を頂いた。要するに、こちらの記事※)と同じ話である。
※)関連記事:ARMの“後払い”ライセンスに見え隠れするRISC-Vの興隆
RISC-Vと言っても実際は非常に多くのベンダーがそこに参画しており、当然IPの提供形態はまちまちであるが、RISC-Vの盟主といっても良いSiFiveは当初からサブスクリプションベースのライセンスを提供しており、Armの「Flexible Access License」はまさにこれに真っ向勝負を掛けている形になっている。そして今回のCustom Instructionも、RISC-Vが当初から用意していた(何しろ基本命令セットの中に、Custom Instruction用のフィールドが当初から用意されている)もので、Armに対するRISC-Vのメリットの1つとされていたものだ。
要するにRISC-Vとの徹底抗戦を最後までやり抜く、という強い意志の表れの1つが、Custom Instructionといえるだろう。
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