繊維アパレル業界に、植物由来多孔質炭素材料のライセンスを開始:材料技術
ソニーは、繊維・アパレル業界に対し、植物由来多孔質炭素材料「Triporous」のライセンスを開始した。「Triporous FIBER」の商標名で展開される繊維アパレル製品は、優れた消臭力が長時間持続し、洗濯することで機能が回復する。
ソニーは2019年10月23日、繊維・アパレル業界に対し、植物由来多孔質炭素材料「Triporous(トリポーラス)」のライセンスを開始したと発表した。
Triporousは、米の籾殻を原料とする多孔質炭素材料で、2nm以下のマイクロ孔、マイクロ孔よりも大きな2〜50nmのメソ孔、約1μmのマクロ孔が多数複合して存在する。この微細構造により、これまでの技術では吸着しにくかった、分子量の大きな物質を容易に吸着し、低分子化合物を高速で吸着できる。
ソニーは同年1月、Triporousのライセンスを開始。その後、複数の企業や研究機関と協業してTriporousを用いた繊維を開発し、今般、この繊維を用いた製品を同社パートナー企業が発売した。これらの繊維アパレル製品は「Triporous FIBER」という商標名で展開される。
Triporous FIBERは消臭性能に優れ、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸など、体臭の原因となるさまざまな臭気分子を素早く吸着する。吸着量の多さから、その消臭機能は長時間持続し、洗濯することで機能が回復する。さらに、生乾きの臭いの原因とされるモラクセラ菌などの細菌類に対する抗菌制菌性能も持つ。
Triporousの原料である米の籾殻は、再生可能な生物由来の有機性資源だ。このような余剰バイオマスを活用し、機能性に優れた繊維として展開することで、同社は環境に配慮した循環型社会の構築に貢献するとしている。また、引き続き、Triporousの活用や研究開発を検討する企業、研究機関を募集する。
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