“軽やかな”耐震補強を実現するカーボンファイバー、建築でも採用広がる:材料技術
小松精練と東京大学 工学部 建築学科 隈研吾研究室は、東京大学構内でイベント「この先に繋げる都市環境のアイディア」を開催。新たな建築材料として、カーボンファイバーによる耐震補強などについて紹介した。
小松精練と東京大学 工学部 建築学科 隈研吾研究室は2018年8月21日、東京大学構内で開催したイベント「この先に繋げる都市環境のアイディア」に併せてメディア向けの会見を行った。
両者は2013年3月から、環境デザインや建築材料の機能性の研究拠点として「サスティナブル・プロトタイピング・ラボ(SPL)」を設立しており、2014年から毎年、SPLの展示・報告会を行っている。今回は、SPL設立から5年目の節目となっており、「建築や環境を未来に繋げる」ことに重点テーマに掲げた。
東京大学 工学部 建築学科 教授の隈研吾氏は「最近の異常気象に代表されるように、地球環境は厳しくなっている。建築についても従来の技術では立ちいかなくなる可能性が高い。SPLでは、コンクリートやアスファルトで覆われた都市に対する問題意識を持って研究を進めてきた。今回の展示はその成果となる」と語る。
新たな建築材料の代表例として紹介したのがカーボンファイバー(炭素繊維複合材料)である。「これまで木造建築の耐震補強には鉄が使われていた。しかし、補強するためとはいえ、建築材料の木よりも重い鉄を使うのは本末転倒だ。カーボンファイバーなら、軽やかに補強することが可能だ」(隈氏)。
カーボンファイバーは、小松精練の研究施設「fa-bo(ファーボ)」や善光寺、富岡第3号倉庫、浜田醤油などの耐震補強に用いられている。これらの耐震補強プロジェクトを手掛けてきた江尻建築構造設計事務所の江尻憲泰氏は「カーボンファイバーは、軽くて温度変化が少なく、ロッドにすることで柔らかさも得られる。まさに木造建築の補強材料にぴったりだ」と述べる。また、柔らかさについては、180度まで曲げても強度が落ちないことを確認している。
小松精練 会長の中山賢一氏は「今の建築・建設業界は目の前の利益を追い求めすぎていて、やるべきことを後回しにしていないか。くだらない材料を使うのではなく、子や孫の世代のことまで考えた建築・建設を行うべきだ」と強調した。
展示では、小松精練の熱可塑性炭素繊維複合材料「カボコーマ」のロッドで白樺の木を複雑に組み上げたオブジェや、同社の発泡セラミックブロック「グリーンビズ」を用いたビル屋上の治水インフラ「グリーンビズダム」などを披露した。
「グリーンビズダム」の展示。高い保水能力を持つ「グリーンビズ」と空間貯水を組み合わせれば、ビルの屋上で100〜120mmの貯水が可能になる。これにより、豪雨時の急激な排水を遅延できれば、都市の治水につながるという(クリックで拡大)
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