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最先端スマート工場の秘訣は日本式にあり? カギはスモールスタートとリーン製造スマート工場最前線(5/5 ページ)

世界経済フォーラムが2018年に発表した世界で最も先進的な工場の1つに選ばれた、シュナイダーエレクトリックのル・ヴォードライユ工場。世界最先端のスマート工場ではどのような取り組みが行われているのだろうか。同工場でのスマート工場化への取り組みを紹介する。

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工場全体のエネルギー効率化も実現

 スマート工場化により工場全体のエネルギー効率削減も実現した。これにはビル向けの「EcoStruxure」である「EcoStruxure Building」を導入し、工場設備の各所のエネルギー消費量をリアルタイムで収集。これらの情報と、世界中の他のベンチマーク拠点を比較し、改善点を見つけ出し改善活動を進めている。ヒートポンプやコンプレッサーの稼働最適化や証明のLED化などの取り組みにより、2018年は前年比で15%、使用エネルギーを削減。さらに2019年は4%削減を目指しているという。

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ディスプレイでの工場内のリアルタイム情報を生かして改善活動などを実施(クリックで拡大)

スマート化の土台となるセキュリティ

 これらのスマート工場化の取り組みにおいて重要になるのがサイバーセキュリティだ。全ての機器やシステムがインターネットに接続するIoT(モノのインターネット)活用ではあらゆる場面でセキュリティ確保が必要になるが、データセキュリティの面でもさまざまな取り組みを行っている。工場内のデータ活用については、オンプレミスとクラウドのハイブリッドで行う。工場内にマイクロデータセンター「SMART BUNKER」を設置し、全体の4割のデータをここで処理する。6割は同データセンターを経由しクラウドに送り、クラウド側の豊富なリソースを活用して処理するとともに、多拠点などとのデータ連携などを行う。

 インフラ系制御システムに特化した「Claroty」を採用している他、物理的にも防火や人の進入監視を行うなど安全性を確保している。さらに、工場内の持ち込み機材などの安全性確保の面では、ウイルスチェックなども工場入室前に行うようにしている。

photophoto 工場内に設置されたマイクロデータセンター「SMART BUNKER」(左)と持ち込みUSBメモリなどの確認をする装置(右)(クリックで拡大)

スマート工場化の大前提となるリーンマニュファクチャリング

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ル・ヴォードライユ工場 工場長のエマニュエル・モリス氏

 これらは、ル・ヴォードライユ工場でのスマート工場化の取り組みの一部ではあるが、日々さまざまな取り組みを行い、成功の形を生み出し続けているという。「チェンジマネジメントが何よりも重要だ。さまざまな壁を払い、全員が参加することが成果に結び付く最大の要因だ」とル・ヴォードライユ工場 工場長のEmmanuel MORICE(エマニュエル・モリス)氏は語っている。

 またその土台となるものについてモリス氏はトヨタ生産方式(TPS)が基盤となったリーンマニュファクチャリングや、リーンマネジメントが前提だとする。「何の秩序や規則などもないままにスマート工場化に取り組んでも成果を出すことは難しい。前提としてリーンマニュファクチャリングやリーンマネジメントがあり、これらをデジタル化するという順番で取り組むことが必要だ。これらを積み重ねていく必要がある」とモリス氏は強調していた。


 ここまでル・ヴォードライユ工場のスマート工場化への取り組みを見てきたが、いかがだっただろうか。「世界で最も先進的な工場」に選ばれたル・ヴォードライユ工場だが、基本的には日本の多くの工場とそれほど変わらない考え方で取り組みを進めている。重要なのはこれらの取り組みを徹底して進め、さらにそれを広げるという発想があるかどうかだと感じた。

(取材協力:シュナイダーエレクトリック)

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