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ネットワークカメラで工場業務を効率化、キヤノンが狙う“工場の新たな目”産業用画像技術(2/2 ページ)

キヤノンは、同社が製品展開しているネットワークカメラや画像処理技術と、自社で培う製造技術などを組み合わせ、2018年から製造現場(FA)向けの画像ソリューションに力を入れる。製品やソリューションの拡充を進める一方、シーメンスやユニバーサルロボットなどのパートナーを増やし、具体的な用途の開拓に取り組んでいる。その戦略を聞いた。

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協働ロボットやパートナーとの提携

 製造現場におけるネットワークカメラの価値について、枝窪氏は「製造ライン内の画像認識については高速高精度が要求されるため、ネットワークカメラではなく従来のFA用マシンビジョンの方が適している。ネットワークカメラの特徴は、自由な視点でオートフォーカスや自動露出補正機能などを備えているという点だ。複数の箇所や複数の個体を1台で認識するような場面で、高速性がそれほど必要ないといったところが活躍の場だと考えている」と活用シーンについて語っている。

 こうした活用シーンとして最適なものの1つが、協働ロボットとの組み合わせである。キヤノンではデンソーウェーブと協働ロボットにおいて、協業を行っているが新たに2019年8月には協働ロボットのグローバル大手企業であるデンマークのユニバーサルロボットと提携を発表(※)。協働ロボットとネットワークカメラの組み合わせで製造現場への新たな価値を訴えている。

(※)関連記事:キヤノンとユニバーサルロボット、人と共に働くロボットの“手”と“目”が協業

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キヤノンのネットワークカメラとユニバーサルロボットの協働ロボットの組み合わせで、部品のピックアップをする様子(クリックで拡大)

 発表後は既にさまざまな問い合わせが入っているといい、大きな手応えを感じているという。岡田氏は「ネットワークカメラは目の役割を果たすが、実際の作業を行えるわけではない。ロボットとの組み合わせが最適だが、従来の産業用ロボットは高速高精度の繰り返し動作が要求されるがこうした用途にはネットワークカメラは適していない。協働ロボットは、人と一緒に働くために速度や精度が通常のロボットほど要求されるわけではなく、一方で人が見ている複数のポイントなどを一度に確認することが要求されるために、従来のカメラでは対応が難しかった領域でも活用できることになり、最適な組み合わせだと考えている」と語っている。

 同社ではこの他、スマートファクトリーの全体のソリューションとしてはシーメンス、SCADAソフトウェアとしては英国のAVEVAと提携するなど、パートナーシップを拡張しており、製造現場のさまざまな課題解決を「ビジョン」を通じて図っていく方針である。

5Gなどで画像の価値はさらに拡大

 キヤノンのネットワークカメラの製造現場における強みについて枝窪氏は「使いやすさが特徴だ。オートフォーカスや自動露出補正などの精度に加え、画像認識ソフトウェアでのフローチャート方式での設定など、使い勝手に配慮した設計になっている」と語っている。

 ただ、引き合いは多くなってきたものの、成功事例となるほどの大きな成果はまだこれからだという。枝窪氏は「どうしてもIoT(モノのインターネット)などの話になると、PoC(概念実証)など検証に時間がかかってしまっている。これらの成果を早期に出せるようにしていくのが今後の大きなポイントだ」と語っている。

 今後は、さらに具体的な用途の拡大を進めていく他、現場環境に合わせて耐久性を強化したモデルなども用意する。また、画像認識ソフトウェアについては、分析機能などを強化していく方針だ。

 枝窪氏は「ローカル5Gなど通信環境の大きな変化などもあり、画像や映像を生かしたソリューションは工場内でもさらに広がりを見せると考えている。より早く具体的な価値を示し、製造現場の変革に貢献していく」と語っている。

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キヤノンのネットワークカメラ(クリックで拡大)

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