大量生産は誰にでもできることじゃない
「ゼロからトースターを作ってみた結果」(トーマス・ウェイツ著、村井理子訳、新潮文庫)という本を読みました。デザインを学ぶ学生が、原材料を調達しながらなるべく自力でトースターをつくっていくノンフィクションです。
鉄鉱石を探しに家から200km以上離れた古い鉱山を訪ねたり、自宅の庭に溶鉱炉を手作りして鉄鉱石から鉄を取り出そうとしたり、マイカを探しに1700km移動したり、ジャガイモのデンプンからプラスチックを生成しようとしたり、トースターの外観に必要な型を木彫りでつくったり、ニッケルを入手するためにロシアに行くかフィンランドに行くか悩んだり、大変なガッツにあふれています。
著者は、3ポンドちょっと(約420円)でトースターが売られているのはなぜなのか、自然の中から取り出された油や石ころがどのようにしてトースターになるのかという疑問から、トースターを自分の手でつくることを決めました。単なる工作好きなのではなく、「トースターは近代の消費文化の象徴なのではないか」「人類の努力の大部分は、ほんのもう少しの快適さを追求するために費やされているのではないか」「身の回りのものを自分自身の手でつくれないってどうなんだろう」というデザイナーらしい思いも背景にあります。
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