出身者と現役が語る「学生フォーミュラで培われる“現場力”」:学生フォーミュラ2019(4/4 ページ)
学生がクルマ作りの総合力を競う「学生フォーミュラ」。クルマ作りの過程での厳しい経験を踏まえた人材は、社会人でも活躍するという声が多い。学生フォーミュラではどんな“現場力”が身に付くのだろうか?
東海大学チーム復活のカギはノウハウ継承と課題解決力
2004年の第2回大会から出場している学生フォーミュラの常連校が東海大学だ。2005年と2009年は総合7位、2010年は総合5位、2014年は総合6位にも入賞するなど、学生フォーミュラでは強豪校の一角を占めてきた。この2014年までの東海大学は、各学年でプロジェクトを結成し、3回生時に大会に出る「1学年1チーム制」で臨んでいたが、2015年は3回生の人数が少なかったことから2回生との合同チームを結成。だが33位と大きく総合順位を落としてしまった。
翌年の2016年も36位と不振が続いた東海大学は、2017年からチームの歴史の中でも初となる、全学年でプロジェクトを構成する体制に変更した。
この体制変更が功を奏したのか、2017年は総合26位、2018年は8位と順位を上げ、今年2019年は総合7位になるなど2年連続でトップ10入りを果たした。さらに今回は、静的・動的審査の全てを完遂・完走したチームに与えられる「日本自動車工業会会長賞」も獲得している。
2019年のプロジェクトリーダーを務める木村優希氏(東海大学 工学部 動力機械工学科3回生)は「同じ学年だけでプロジェクトを構成していたころは、チームの一体感がありコミュニケーションも取りやすい半面、次の学年へのノウハウの継承が十分にできなかった。全学年でのプロジェクト体制は、3年経ってようやく軌道に乗った。さらに今年は、VSNによる課題解決セミナーを活用。モノコックボディの強度設計に苦労していたのだが、その時の問題解決にセミナーの内容が役立った」と語る。
東海大学でFAを務める工学部動力機械工学科助教の加藤英晃氏は「1学年1チーム制は同じメンバーで1台のクルマを熟成させることができるという長期的なメリットもあるが、卒業でリセットしてしまうような状態で熟成したノウハウが継承されなかった。2017年から車両の構想・設計段階から上級生と下級生が協力して車両開発を行うようになったが、徐々にその効果が表れており、ノウハウ継承もうまくいっている」と語る。
チーム人員体制の変更とともに、車両設計の方は3年間で完成させる長期計画をスタート。2018年に新たに設計されたモノコックボディだが、2019年はボディのベースは同じものを使いつつ、空力やサスペンションなどを熟成させてきたという。それが8位→7位という結果につながったのだとすると、3年計画の集大成となる2020年にはさらなる飛躍が期待できそうだ。
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