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プラスチックやゴム用加工機で「つながる」を実現する「EUROMAP」とは何かいまさら聞けないEUROMAP入門(1)(1/4 ページ)

射出成形機などプラスチックやゴム用加工機などでスマート化に向けて注目されている通信規格が「EUROMAP 77」である。本連載では「EUROMAP」および「EUROMAP 77」「EUROMAP 83」とはどういう規格なのか、技術的にはどういう背景があるのか、どのような活用シーンがあるのかについて、紹介する。第1回となる今回は「EUROMAPとは何か」をテーマに概要を取り上げる。

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 ドイツで数年前に始まったインダストリー4.0の取り組みは、ドイツ国内の産業だけではなく世界各国にその影響を広げている。日本で進められているSociety5.0や、米国が中心となって進めているIndustrial Internet Consortium(IIC)などについても「高度なIoT(モノのインターネット)技術をベースとして、さまざまなレイヤーが相互につながることで新たな付加価値を創出する」という点において、インダストリー4.0と共通のコンセプトを持っている。

 言い換えれば、このような「つながる」仕組みを構築することがそれぞれの取り組みに共通した目的といえるだろう。当然、異なるレイヤーの機器同士がメーカーの垣根を超えて「つながる」ためには各メーカー独自の規格ではなく、オープンな仕組みが必要になる。近年、欧米の産業界を中心としてオープンアーキテクチャの技術が広がりつつあるのはこうした背景によるものだ。

 射出成形機をはじめとしたプラスチック、ゴム用加工機械やその関連機器の業界においてもオープン化への取り組みは着実に進んでいる。その中でも「つながる」システムを実現するためのキーワードとして注目を集めているのが「EUROMAP(ユーロマップ)」である。

 各メーカーの機器を接続するための「共通言語」となり、インダストリー4.0などが目指す「つながる」モノづくり現場を実現する手段として各社が検討を進めている「EUROMAP」とはどういう規格なのだろうか。本連載では「EUROMAP」の概要や最新情報などをお伝えする。第1回となる今回は「EUROMAP」および「EUROMAP 77」「EUROMAP 83」の概要について解説する。

EUROMAPとは

 EUROAMAPとは、1964年に設立された欧州のプラスチックおよびゴム業界の主要メーカーから成る統括組織である。現在、構成企業は1000社を超えており、総数で5万7000人以上が関わる非常に大きな組織となっている。

 EUROMAPは、欧州のプラスチック、ゴム関連メーカーやその機器の概要情報や市場情報を提供する一方で、同市場における技術的な推奨規格(Technical Recommendation)を策定して普及させる活動を行っている。

 これまでも「EUROMAP 63」「EUROMAP 67」など「EUROMAP xx」という形でさまざまな規格を策定してリリースしている。こうした規格を策定する際はEUROMAP以外の業界団体と共同で技術委員会を組織して、より一般的な規格として浸透させるべく活動することが多い。例えば、EUROMAP 63は米国のプラスチック産業協会(SPI)と共同して策定した射出成形機におけるデータ交換インタフェースだ。国際的な普及や浸透に力を注いでいるものの、同規格は日本国内の射出成形機メーカーにおいてはさほど普及しないまま現在に至っている。

 こうした取り組みを重ねているEUROMAPだが、その新しい規格として注目されているのが「EUROMAP 77」である。インダストリー4.0に対応したデータ通信を目的としており「OPC UA」がベースになっていることが大きな特徴だ。

EUROMAP 77の歴史

 そもそもEUROMAP 77とはどういった経緯で検討、開発されたものなのだろうか。

 インダストリ−4.0が提唱され始めた頃には「従来のEUROMAP 63に変わる新しい規格」としてEUROMAP 77の検討は進められていた。しかし、2015年10月にドイツのArburgが中心となったワーキンググループによってEUROMAP 77はインダストリ−4.0に対応した通信規格となるべくOPC UAをベースとすることが発表された。これがEUROMAP 77の新たな役割を形作った最初の大きなステップだったといえる。

 なお、OPC-UAとはFA分野やその他業界の各機器間でプラットフォームに依存せずに安全でセキュアなデータ交換を行うための標準規格である。OPC Foundationという組織が仕様の策定と維持、認証を行っている。初期の規格であるOPC ClassicはWindows環境だけでしか使えなかったが、1996年にアーキテクチャを拡張しWindows環境以外でもより広範に用途で利用できるようにしたものがOPC UA(Unified Architecture)である。メーカーや分野、OSなどの環境に依存しない通信技術であることやセキュアな通信を保証できること、国際認証規格であることなどのインダストリー4.0の要求事項を包括的に満たしていることから、OPC-UAはインダストリー4.0対応の代表的な通信規格として認識されている(※)

(※)関連記事:「OPC UA」とは何か

 OPC UAをベースにすることを前提に、EUROMAP 77の開発はドイツの生産財関連工業会の連合体であるドイツ機械工業連盟(VDMA)やOPC UAを推進するOPC Foundationの協力の下で進んだ。さらに、欧州の射出成形機メーカー、MES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)メーカー、制御器メーカーなども参加し、これらの企業群が中心となって規格の策定や技術開発が行われていった。

 EUROMAP 77が最初に公開されたのが2016年にドイツのデュッセルドルフで開催された国際プラスチック・ゴム産業展「K 2016」である。同年の10月にはEUROMAP 77の仕様がまとめられて「Release Candidate(RC)」の形で発表されていたが、K 2016ではこのRCの仕様にのっとって複数の射出成形機のライブデータを別ホールに出展したドイツのXitasoのブースで表示するライブデモを実施。多くの人の注目を集めていた。

 K 2016の後、当初より協力関係にあったOPC FoundationとEUROMAPが2017年2月に正式に覚書(MoU)を締結し、EUROMAP 77をはじめとしたプラスチックおよびゴム機械関連の次世代の通信インタフェースをOPC UAの「Companion Specification(コンパニオン仕様)」としてリリースすることに合意している(※)

(※)関連記事:主要規格と続々連携、ハノーバーメッセを席巻したOPC UAのカギは“間をつなぐ”

 こうした取り組みを経て2018年5月に米国で開催された産業プラスチック技術の展示会「NPE2018」のEUROMAPプレスツアーにおいてEUROMAP 77の正式リリースが発表された。

 なお、発表まではEUROMAPにおいて、インダストリー4.0に対応する「つながる」を特徴とした規格は、EUROMAP 77として検討・開発されてきたが、射出成形機だけでなく周辺機器などのさまざま関連機器に同様な共通規格を適応させるため規格を分割。あらゆる機器に共通して使用できるObjectTypeを規定したEUROMAP 83と、射出成形機とMES間の通信を規定したEUROMAP 77という2つの規格が同時にリリースされている。リリース時には、EUROMAP 77の導入により異なるメーカーの機械間の相互接続が可能になり、状態監視、生産データの取得、ジョブ管理や設定データの送受信が容易になる点が強調された。

 さらに、EUROMAP 77に続いて、共通規格であるEUROMAP 83を補完する形で温度コントローラー(EUROMAP 82.1)や取り出しロボット(EUROMAP 79)などの周辺機器間の通信インタフェースもOPC UAコンパニオン仕様として順次策定していくことが合わせて発表されている。

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