ANSYSが掲げる8つのテクノロジー戦略と次世代モビリティ実現へのアプローチ:CAEニュース(2/2 ページ)
年次イベント「ANSYS INNOVATION FORUM 2019」の基調講演では、ANSYS CTOのPrith Banerjee氏が登壇し、「Simulating the Future of Mobility(モビリティの未来をシミュレーション)」をテーマに講演を行った。
アンシスの長期的テクノロジー戦略
また、バナジー氏はアンシスの長期的テクノロジー戦略として、今後5年間アンシスのビジネスをけん引するであろう技術トレンドに触れ、以下のスライドを基に8つのポイントを紹介した。
バナジー氏は「AI(人工知能)は今後のシミュレーション技術をさらに加速させるものだ。マルチフィジックス解析も当たり前になってくるため、全てのソルバーが使えるようなオープンなプラットフォームの提供も不可欠となる。さらに、並列処理による高速化、リアルタイムシミュレーション、シミュレーション駆動の最適化設計に対するニーズも高まるとみている。また、デジタル世界を現実世界に取り込むAR/VR技術、DXといった技術のサポートも重要になるだろう。もちろん、これまで通り、新たな物理領域への対応も考える必要があるし、シミュレーション技術のさらなる進化に向けた技術革新にも挑戦しなくてはならない」と述べる。
講演ではこのうちの1つ、マルチフィジックス解析に対応するオープンプラットフォームとして「ANSYS Minerva」にも触れた。「Minervaを活用することで、顧客は全てのシミュレーションのデータ、プロセスのデータを閲覧および管理することが可能となる。また、このプラットフォームにより、パラメータを活用した最適な設計が行えるようになる。Grantaによる材料データベースとの連携も実現する。Minervaは、オンプレミスでの利用はもちろんのこと、クラウド上からでもマルチフィジックス解析が行える柔軟なオープンプラットフォームである」とバナジー氏は説明する。
続けてバナジー氏は、技術トレンドの1つとして掲げた自動運転に関連し、BMWとの取り組みについても紹介した。通常、自動運転車の開発には試験車両を用いた実走行データが必要となるが、アンシスはシミュレーション技術により、全てのシナリオを網羅したかたちでこれをサポート。「われわれとしては、日本においても自動運転車の分野でさまざまな企業との連携を進めていきたいと考えている」(バナジー氏)。
また、電動化についてもオープンシミュレーション環境を提供しているとし、フォルクスワーゲンとの事例を紹介。フォルクスワーゲンの完全電気駆動レース車両「I.D. R Pikes Peak」の設計にアンシスのソリューションが採用されており、数々の新記録樹立に貢献したとする。
さらに、5Gスタックの開発ではエリクソンおよびノキアと連携。この分野におけるアジア太平洋地域の取り組みとして、LGエレクトロニクスとパートナーシップ契約を締結していることを紹介した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- シミュレーションには高品質な材料情報が不可欠、ANSYS+Grantaがもたらす効果
ANSYSの日本法人であるアンシス・ジャパンは、材料情報技術を有するGranta Design(Granta)を買収した背景と、ANSYS製品として今後どのような展開を図っていくのかを説明した。 - 車室空間の快適性の追求で効果を発揮する3次元光学解析ソフト「ANSYS SPEOS」
ANSYSの日本法人であるアンシス・ジャパンは、工学シミュレーションソフトウェアの最新版「ANSYS 2019 R2」に含まれる、3次元光学解析ソフトウェア「ANSYS SPEOS」に関する記者説明会を開催した。 - 汎用CAE「ANSYS 2019 R1」、構造解析は「いかに速く、効率的に解析ができるか」
アンシス・ジャパンは2019年2月1日、同社の汎用CAEの最新版「ANSYS 2019 R1」に関する記者説明会を開催した。発表会前半では流体解析と構造解析、電磁界解析といった分野別製品、後半ではシステム解析関連製品について紹介した。本稿はそのうち、構造解析ツールと電磁場解析関連のトピックについて紹介する。 - ANSYSとAVSimulationが協業、シミュレーション技術で自動運転車の開発を支援
ANSYSとAVSimulationは、戦略的パートナーシップを締結した。両社のシミュレーション技術を統合することにより、次世代自動運転車をより早く安全に、低コストで設計できるようになる。 - 設計者CAEとは何なのか
機械メーカーで3次元CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者から見た製造業やメカ設計の現場とは。今回は設計者CAEについて考える。 - 材力とFEMをシッカリ理解して、シッカリ解析!
小難しい有限要素法を数式を使わずに解説する。まずは有限要素法の歴史を振り返り、解析の基本的な考え方を確認。