SiC需要拡大に対応しイタリア企業が日本市場に参入、エピ成膜装置を展開:FAニュース
イタリアの半導体製造装置メーカーであるLPE(エルピーイー)は2019年10月2日、日本市場に本格参入し新たに巴工業と代理店契約を行った他、エピ成膜装置の自動搬送型新製品「PE106A」を日本で販売開始すると発表した。
イタリアの半導体製造装置メーカーであるLPE(エルピーイー)は2019年10月2日、日本市場に本格参入し新たに巴工業と代理店契約を行った他、エピ成膜装置の自動搬送型新製品「PE106A」を世界に先駆けて日本で販売開始すると発表した。
拡大するSiC市場に対応して日本に進出
LPEは1972年にイタリア・ミラノで創業した半導体製造装置メーカーである。欧州で初めてエピ装置を開発し、パワー半導体向けエピ成膜装置では世界的にも珍しい専業メーカーである。2001年にSiCエピ装置の開発を開始。2010〜2023年の期間でENIAC-LASTPOWERプロジェクトにも参画している。
日本市場でも既にSi向けエピ成膜装置については数多くの実績があるが、SiC市場などが拡大する中で、SiC向けエピ成膜装置を本格的に拡大する方針である。日本市場に本格参入する理由について、LPE CEOのFranco Preti(フランコ・プレッティ)氏は「SiC技術の進展において日本は重要な国の1つだといえる。既に日本でも自動車や鉄道などさまざまな分野でSiCの採用が進んでおり、日本がグローバルのSiCの発展においても大きな役割を担うと考えている。これらの活動を支援し、その一部を担っていきたいと考え、日本市場での展開を強化することを決めた」と語っている。
日本での展開については巴工業が日本代理店として活動を行う。巴工業内に2018年4月に開発部を新たに創設し、LPE社製エピ装置のプロジェクトチームを立ち上げた。専任の技術者を2人配置し、技術サポートの充実を図るという。
巴工業 常務取締役 化学品本部長の玉井章友氏は「SiC市場が大きく拡大する中、エピ成膜装置も大きく拡大する。2025年のSiCエピ成膜装置の日本市場は100億円になると見ている。その中でLPEのエピ成膜装置でシェア20%獲得を目指す」と語っている。
ウエハーの搬送を完全に自動化
新製品「PE106A」は独自の全自動搬送システム「カセットtoカセット方式」を採用した。搬送が完全に自動化されている点が特徴で、カセットからチェンバー、チェンバーからカセットへと自動で搬送できる。これにより6インチSiCエピ成膜装置として量産に対応できるようになった。また加熱、冷却時間を大幅に短縮することに成功している。
装置サイズは幅1.1×高さ2.2×奥行き3.6mでコンパクトである点が特徴だ。チャンバーの数は1つ。扱える最大のウエハーサイズは150mmである。温度は最大で1800℃までで、ウエハーの搬送を900℃の高温で行えるためにサイクルタイムの短縮を行える。圧力は0〜1000mbarとなっている。
今後は2020年にウエハサイズ200mmに対応した「PE108」、2024年にはチャンバーを2つ搭載し2枚式に対応した「PE20X」を投入する計画だとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 半導体露光機で日系メーカーはなぜASMLに敗れたのか
法政大学イノベーション・マネジメント研究センターのシンポジウム「海外のジャイアントに学ぶビジネス・エコシステム」では、日本における電子半導体産業の未来を考えるシンポジウム「海外のジャイアントに学ぶビジネス・エコシステム」を開催。半導体露光機業界で日系企業がオランダのASMLに敗れた背景や理由について解説した。 - ナノスケールのちりの影響を抑制、半導体製造装置が目指すIoT活用
「SEMICON Japan 2016」のIoTイノベーションフォーラムで登壇した東京エレクトロン執行役員の西垣寿彦氏は、半導体製造における“ちり”の管理と、IoTを使った生産性向上の取り組みについて紹介した。 - 72台の装置を半日で稼働、日本発「ミニマルファブ」が変える革新型モノづくり
産総研コンソーシアム ファブシステム研究会などは「SEMICON Japan 2016」で、「ミニマルファブの開発成果を発表。同研究会などが推進するミニマル生産方式による製造装置「ミニマルシリーズ」72台を設置し、半導体製造工程のほとんどをカバーできるようになった成果をアピールした。 - 第4次産業革命で変わる検査と品質向上の取り組み
製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。本連載では、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについて、話題になったトピックなどに応じて解説していきます。第21回となる今回は、IoTやAIを活用することで品質向上への取り組みがどのように変化するのかという点を紹介します。 - 品質不正問題にどう立ち向かうのか、抜本的解決のカギはIoTと検査自動化
2017年の製造業を取り巻く動きの中で、最もネガティブな影響を与えたのが「品質不正」の問題だろう。「日本のモノづくり」のブランド力を著しく傷つけたとされるが、2018年はこの問題にどう対応するのかという点は、全ての製造業の命題である。人手不足が加速する中、解決につながる「仕組み」や「ツール」に注目が集まる1年となる。 - IoT時代にどう立ち向かうか、自動検査の位置付けを変えたマインドセット
「検査装置は不具合を見つける装置ではなく、不具合を出さないためのものだ」――。基板実装ラインなどで使われる外観検査装置で好調を続けるサキコーポーレーションだが、成功の土台には「マインドセット」の取り方にあったという。サキコーポレーション社長の秋山咲恵氏の講演の内容をお届けする。