タイプ1でもタイプ2でもない、イーソルが“タイプ1.5”ハイパーバイザーを開発:組み込み開発ニュース
イーソルは、同社のプライベートカンファレンス「eSOL Technology Forum 2019」において、開発中のハイパーバイザー「eMCOS Hypervisor(仮称)」を披露した。
イーソルは2019年9月27日、同社のプライベートカンファレンス「eSOL Technology Forum 2019」において、開発中のハイパーバイザー「eMCOS Hypervisor(仮称)」を披露した。自動車の統合コックピットのように、メーターなどリアルタイム性が求められるシステムと、カーナビゲーションをはじめLinuxなどが必要なリッチシステムを、1台のハードウェアプラットフォーム上で完全に分離しながら制御するような用途に向ける。2019年内に一部ユーザー向けに評価を始められるよう開発を急ぐ方針だ。
eMCOS Hypervisorは、イーソルが展開を広げているリアルタイムOS「eMCOS」のPOSIX互換版「eMCOS POSIX」の拡張機能に位置付けられている。eMCOS Hypervisorで機能を拡張したeMCOS POSIXであれば、eMCOS POSIXに対応するリアルタイムアプリケーションに加えて、LinuxやAndroidとその上で動作するアプリケーションを統合して動作させられる。
リアルタイム性が求められる組み込み機器向けには、ハードウェア上で動作するタイプ1と呼ばれるハイパーバイザーが用いられることが多い。これに対して、eMCOS Hypervisorは、ハードウェア上で動作するホストOSのアプリケーションとして動作するタイプ2と呼ばれるハイパーバイザーのようにも見える。「ハードウェア上で動作するeMCOS POSIXにハイパーバイザー機能が組み込まれているのでタイプ1でもあるし、ホストOSとなるeMCOS POSIX上でゲストOSのLinuxやAndroidが動作するのでタイプ2と言えなくもない。そういう意味では“タイプ1.5”のハイパーバイザーになるだろう」(イーソルの説明員)。
eMCOS Hypervisorの特徴は性能の出しやすさになる。従来のタイプ1ハイパーバイザーでは、リアルタイム性を求められるシステムとLinuxなどを用いるリッチシステムを統合制御する場合、リアルタイムシステム側で十分なリアルタイム性能を出せないことがあったという。eMCOS Hypervisorは、ベースOSであるeMCOSが、時間保護が可能なスケジューリング機能を備えていることもありリアルタイム性を確保しやすい。
eSOL Technology Forum 2019の展示スペースでは、ルネサス エレクトロニクスの車載SoC「R-Car H3」を用いたデモも披露した。現時点では開発中ということもあり、eMCOSのコマンド入力画面からLinuxを起動した後、それぞれのヘルプコマンドの入力結果を示すというシンプルなものだったが「ユーザー評価に向けてさらに開発を加速させたい」(同説明員)としている。
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