「Fusion 360」と「EAGLE」を使って簡単な“エレメカ連携”に挑戦!:ママさん設計者が教える「メカ設計者のための電子回路超入門」(3)(3/3 ページ)
電気やプリント基板の設計と、メカ設計がシームレスに連携する“エレメカ連携(エレメカ協調設計)”をテーマに、ママさん設計者が優しく教える連載。最終回となる第3回は、オートデスクの3D CAD「Fusion 360」と基板CAD「EAGLE」を用いたエレメカ連携の簡単な流れについて解説します。
断面解析と修正、そして仕上げ
続いて、2方向から断面解析を実行し、ケースと部品の異常な接触がないか、クリアランスに無駄がないかなどを確認します。もし、問題点を見つけた場合は以下を参考に対処してみてください。
- ケースの形状を見直す
- リード部品の高さを変えてみる
- 搭載部品の位置を変える
リード部品とは、部品に付いた足(リード)を基板のスルーホールに挿入して実装するタイプの部品です。この手の部品は回路に影響することなく、挿入深さを任意で決められますが、基本的には基板上の部品配置には手を付けずに、ケース側の設計の見直しで対処することをオススメします。
基板上に、LEDと抵抗が各1個とボタン電池を並べただけの超シンプルな回路であればためらいもなく部品配置を換えられますが、部品点数が多いと部品のレイアウト変更により、回路自体の特性が変わってしまう可能性があります(この点については前回説明した通りです)。
問題点を改善して再度断面解析を行い(図13、図14)、その結果でこのまま試作に進んでも問題なければ、各ケースの部品データを作成して、3Dプリンタで出力します。ケース下部は切削加工でもいけますが、薄肉に仕上げなくてはなりませんので、無理して切削するよりも3Dプリンタの方が、はるかに早く楽に試作することが可能です。
Fusion 360のモデル表示スタイルを「シェーディング」に切り替えると、エッジの表示が消えて、実際の試作品の質感に近いイメージを確認できます(図15)。さらに、レンダリングを行うことで、よりリアルな状態で形状を見ることも可能です(図16)。
今回紹介した流れとは別に、既に完成しているケースの3Dモデルの中に、生基板のデータを作成し、そこにEAGLEからパターン図を送出して実装基板とケースの3D的な整合性を取ることも可能です。いずれにしても、連携が可能な機械CAD(M-CAD)と基板CAD(E-CAD)を準備して運用を試してみると、その合理性と実務での有効性に納得できるはずです。
電子機器の市場は今後ますます成長していきますから、機械設計の3D化に追い付くように、電気配線や基板設計の3D化も加速していくことでしょう。そうした流れの中で、これまで機構や外装の設計のみを担っていた会社であっても、今後、電気/電子の知識がある一定レベル求められるようになるかもしれません。
そのような時代の流れに乗り遅れないためにも、そして、次の世代を担うエンジニアのための開発環境を整えるためにも、“エレメカ連携の本質”を理解し、実践していただけたら幸いです。 (連載完)
Profile
藤崎淳子(ふじさきじゅんこ)
長野県上伊那郡在住の設計者。工作機械販売商社、樹脂材料・加工品商社、プレス金型メーカー、基板実装メーカーなどの勤務経験を経てモノづくりの知識を深める。紆余(うよ)曲折の末、2006年にMaterial工房・テクノフレキスを開業。従業員は自分だけの“一人ファブレス”を看板に、打ち合せ、設計、加工手配、組み立て、納品を一人でこなす。数ある加工手段の中で、特にフライス盤とマシニングセンタ加工の世界にドラマを感じており、もっと多くの人へ切削加工の魅力を伝えたいと考えている。
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