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基板CADから3Dモデルをもらい効率化図るがエレメカ協調セキララ事情(1)(1/2 ページ)

設計がどんどん複雑化していく中、スムーズなエレメカ協調設計を図ろうと思考錯誤している設計現場やコンサル側の本音に耳を傾ける。今回は横河電機編

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 エレクトロニクス分野の急速な発展により、機構部品がどんどん電装部品に置き換わっていっています。機械設計と電子設計との境界はあいまいになってきていて、両設計の絡みつきもどんどん複雑になってきています。いま、機械設計と電子設計の間においてのスムーズな協調がより強く要求されていますが、これがまた、一筋縄ではいきません。

 本シリーズでは、設計現場の本音や、CADのコンサルタント側の正直な意見と正面から向き合いつつ、スムーズなエレメカ協調設計の手法の模索をしていきます。

 今回は、横河電機に勤務する機構設計グループのリーダー 竹原 徹氏に、機械設計と電子基板(プリント基板)設計間のデータ交換の事情をお伺いしました。

――過去の、紙ベースのデータ交換の状況を教えてください。また、その当時の苦労話なども教えてください。

 機械設計と電子基板設計間の情報伝達手段が“紙”しかないときは、紙を読み取るときの間違いだったり、紙を読み取った後の入力間違いだったり……とにかく、お互いの設計意図が100%正確に伝わらないものでした。

 DXFすらない時代は、電子基板設計サイドからもらうデータは部品配置の座標データだったのです。もちろん、細かい部品のデータまでもらうわけではありません。小さなコンデンサから何でもかんでも、電子部品のすべてを入力しようとしたら、当然、大変な作業になります。ですから、筐体(きょうたい)や機構部品との干渉が心配される大きめな部品などの座標データだけをもらっていました。

 私たちは、その座標データと部品のカタログ寸法図を基に、機構設計の3次元CADによって電子部品の3次元モデルを作ります。その際には、数字の羅列を1つ1つ読んでいくのですから、気を使う作業ですよ。

 DXFを利用し始めたときは、座標値を読み取りながらモデリングしなくてもよくなったので、その分の負担が減ったことになります。部品の座標情報、パターンや配線データをそのまま取り込めるので、部品の配置位置はあまり間違えなくなりました。でも、機械設計サイドの3次元CADでモデリングしなければならないということには変わりありませんでした。ちなみに、これは4、5年ぐらい前の事情です。


横河電機 通信・測定器事業部 要素技術開発センター プラットフォーム技術統括 機構設計Gr チームリーダー 竹原 徹氏

――上記のようなやり方ですと、「うっかりミスで、電子設計の方で行った変更が機械設計へ反映されなかった」みたいな事件もあり得ますね?

 ありますあります。まあしかし、いまのところも完ぺきには解消されていない問題なんですが……。

 機械と電子基板間での設計変更のすれ違いによって起こる問題は、機構設計の段階で表面化することもあるし、もっと後の段階……モノができてしまってから表面化する場合もあります。特にモノができてしまった段階での発覚ですと、コスト的にも時間的にもデメリットが大きいですよね。

――3次元化した電子基板データがそのまま取り込めるようになって良かったことは?

 DXF時代と比べると、設計効率はかなりアップし、コミュケーション不足によるミスが激減しました。機械設計サイドの3次元CADで電子基板情報のモデリングをする手間がなくなり、設計の早い段階での部品干渉の洗い出しがしやすくなりました。

 また、層の厚さ情報まで正確に、機械設計サイドの3次元CADに取り込めるところもいいと思いますね。

 現在の当社では、電子基板CADから機械CADへの3次元データ受け渡しにおいて、IDFデータを利用しています。この際、変換ソフトなどは仲介させる必要がなく、使用している3次元CAD(コクリエイト「OneSpace Modeling」)からじかにデータのインポートが行えます。

用語

IDF(Intermediate Data Format) 1992年に開発された電子基板CADと機械系3次元CAD間における3次元中間フォーマット形式。



 利用し始めたのは、1、2年ぐらい前です。電子基板設計の担当にお願いし、電子基板CAD(ワイ・ディ・シー 「CADVANCE」)から電子部品と基板情報をIDF出力してもらっています。そこには、外形寸法だけではなく、厚さ(高さ)情報も含まれています。部品の厚さ情報に関しては、事前に電子基板CAD管理部署で入力する作業が発生します。

 IDF出力情報に含まれる部品外形寸法や厚さ寸法には、最大実体やはんだの盛りなどは考慮せず、外形寸法はカタログスペックで入力しています。

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