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ファブラボとの掛け算で広がる可能性、他者と協業しながら作り上げるという精神日本におけるファブラボのこれまでとこれから(5)(2/3 ページ)

日本で3番目となる「ファブラボ渋谷」の立ち上げを経験し、現在「ファブラボ神田錦町」の運営を行っている立場から、日本におけるファブラボの在り方、未来の理想形(これからのモノづくり)について、「これまでの歩み」「現在」を踏まえつつ、その方向性を考察する。最終回となる今回は、ファブラボとの掛け算で広がる可能性、そしてファブラボが描く未来像について取り上げる。

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プラグイン事例:町工場×ファブラボ

 3Dプリンタやレーザーカッターなどの機能を、既存の製造手法の中に組み込む実験を進めています。その事例の1つが、TechFactoryの記事「未知なるジェネレーティブデザインを前に砂型鋳造の限界に挑んだ町工場のプロ魂」で紹介されています。

ジェネレーティブデザインを取り入れた鋳物試作の事例
ジェネレーティブデザインを取り入れた鋳物試作の事例 [クリックで拡大]

 間もなく創業50年を迎える町工場の鋳造技術と3Dプリント技術との融合をテーマに実験を繰り返し、その活用方法を探ってきました。既存の製造業からは畑違い(あるいは競合)と思われがちな3Dプリント技術ですが、その特徴が製造業者の技術と結び付くと、思いもよらない成果が得られることがあります。実際、この工場では3Dプリント技術を取り入れることに成功し、新たな製法が確立され、「鋳物試作」という新事業をスタートさせています。

 この一連の製法実験を、ファブラボ神田錦町のファブマスターが技術サポートしています。また、製法開発を進める中で、ジェネレーティブデザインという新しい設計手法の実践もしています。次世代の設計手法といわれるこの技術トレンドを、ファブマスターが翻訳者となり、製造業の方々とともに実装を考えています。

 ジェネレーティブデザインが取り入れられた事例は、続々と生み出されています。3Dプリンタなどの付加製法技術(Additive Manufacturing)の発展により、こうした形状が当たり前になる未来がそこまで来ています。

ジェネレーティブデザインの事例(1)ジェネレーティブデザインの事例(2) ジェネレーティブデザインの事例(1)(2) [クリックで拡大]

プラグイン事例:小売業×ファブラボ

 デジタルファブリケーションツールの特徴である、データ改変の容易さ、加工の手軽さ、素早い加工性を生かした“多品種少量生産の仕組みづくり”にも取り組んでいます。

 連載第2回で紹介した「デジタル加工工房LOFT&Fab」。ここでは、ロフトの店頭に並ぶ商品をお客さま自身がカスタマイズできる、というコンセプトで工房が運用されています。商品を一つ一つ“カスタマイズ”することで、大量生産の商品を「世界に1つだけの商品」へと昇華しています。

デジタル加工工房LOFT&Fab
デジタル加工工房LOFT&Fabの様子 [クリックで拡大]

 お客さまに対しては、カスタマイズを通じた「デジタルファブリケーション体験」を提供しつつ、「このお店で買う価値」づくりを店舗(ロフト)側とともに取り組んでいる事例となります。デジタルファブリケーションツールを、従来の小売店舗の形態に掛け合わせることで、次世代型小売店のスタイルを提案しています。

 店頭には「ファブリケーションプランナー」という専門スタッフが常駐していることも、新しい試みです。お客さまのカスタマイズデータ作成と加工を柔軟にサポートします。また、カスタマイズの理想を聞き出しながら、最適なプランをご提案しています。「加工したくても必要なデータが作れない」といった苦手部分をサポートしながら、より気軽にカスタマイズできる体制を整えています。

プラグイン事例:国際協力×ファブラボ

 青年海外協力隊がファブラボをベースに活動する――。そんな取り組みがJICA(国際協力機構)でスタートしています。2019年9月に募集していたのは、「ファブラボブータン」を活動拠点にする取り組みです。2年間にわたる派遣期間において、現地のファブラボで製作を進めながら、防災や減災に役立つツールの試作を支援することが期待されています。

 アイデアを迅速にカタチにしながら、試行錯誤をテンポよく進めていくために、ファブラボが活用されています。また、世界のファブラボともネットワークでつながるため、他のファブラボと協業しながらの試作開発も行えます。

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