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ファブラボとの掛け算で広がる可能性、他者と協業しながら作り上げるという精神日本におけるファブラボのこれまでとこれから(5)(1/3 ページ)

日本で3番目となる「ファブラボ渋谷」の立ち上げを経験し、現在「ファブラボ神田錦町」の運営を行っている立場から、日本におけるファブラボの在り方、未来の理想形(これからのモノづくり)について、「これまでの歩み」「現在」を踏まえつつ、その方向性を考察する。最終回となる今回は、ファブラボとの掛け算で広がる可能性、そしてファブラボが描く未来像について取り上げる。

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 これまで、「ファブラボ(FabLab)」という活動を振り返りながら、その役割について紹介してきました。いよいよ最終回。今回は少し未来を眺めながら、書き進めていきたいと思います。

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地域の実験室「ファブラボ」

 この数年、ファブラボやメイカースペースの拡大によって、モノを作る行為がグッと身近になりました。「レーザーカッター」や「3Dプリンタ」といった機材名称も、耳なじみのある言葉になっているのではないでしょうか。

 例えば、「SNSで話題!」といった見出しの記事を読んでみると、3Dプリンタで精巧に作られた模型が取り上げられていたり、街中のショップにはレーザーカッターを駆使したハンドメイドのアクセサリーが並んでいたり、さらには夕方のニュース番組で3Dプリンタを用いた製法で作られた不思議なチョコレートが紹介されたりと、デジタルファブリケーションツールが当たり前のように私たちの日常へ浸透しつつあります。

 こうしたツールは限られた人だけのモノではありません。「作りたい!」と思う誰もが、利用できる機会が用意されています。それが、ファブラボです。

 ファブラボは週に1度、無料で地域に開放されています。これを「オープンラボ」と呼んでおり、これまでに紹介してきたデジタルファブリケーションツールを使ったモノづくりや、ユーザーコミュニティーに参加できます。利用方法は、ラボごとに定められていますので、利用前に必ず確認してください。

オープンラボの様子(1)
オープンラボの様子(1) [クリックで拡大]

 なお、ファブラボ神田錦町のオープンラボは「アプライ制」を取り入れています。事前にラボ利用の提案書を提出いただき、簡単な内容審査を行っています。少々堅苦しく聞こえますが、これは「フリーライダー()」を防ぐための対策であり、ファブラボ思想への理解を深めていただくためのものです。

※フリーライダーとは:ソフトウェアの領域で時々耳にする言葉ですが、オープンソースソフトウェア(無償公開)の使用はするものの、そのコミュニティーには何も還元しない使用者のことを指します。ファブラボでは、無償開放日(オープンラボ)を設けてオープンアクセスの体制を整えるよう定められており、オープンラボを利用するユーザーには、ファブラボコミュニティーへの還元が求められています。

「ファブマスター」という仕事

 ファブラボには「ファブマスター」がいます。連載第2回でも触れましたが、このマスターたちは普段何をしているのでしょう。筆者が所属するファブラボ神田錦町を例に紹介します。

 神田錦町のマスターは、美大出身のクリエーターと機械設計エンジニアを中心に構成されています。週に1度のオープンラボでは、アートとエンジニアリングの視点でユーザーをサポートしながら、共に製作に取り組んでいます。

 そして、オープンラボ以外の時間を使って、私たちはファブラボの機能や思想を、既存の仕組みへプラグインすることに日々取り組んでいます(詳細は後述)。このような事業によって得られた利益により、週に1度のオープンラボを実施しています。

オープンラボの様子(2)オープンラボの様子(3) オープンラボの様子(2)(3) [クリックで拡大]

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