「レベル4自律走行」は引き続き“幻滅期”、「5G」や「エッジAI」は“過度の期待期”:製造マネジメントニュース
米国の調査会社Gartnerは、「先進技術におけるハイプサイクル2019年版」を発表した。調査結果によると、5Gやバイオチップ、エッジアナリティクスなどが「過度の期待のピーク期」を迎えている一方、レベル4自律走行は「幻滅期」に入ったとしている。
米国の調査会社Gartner(以下、ガートナー)は2019年8月29日(現地時間)、「先進技術におけるハイプサイクル2019年版」を公開した。
ガートナーのハイプサイクルは2000を超えるテクノロジーをグループ化し、その成熟度、企業にもたらすメリット、今後の方向性に関する分析情報を図で表したもの。先進的な技術が「大きな期待」「幻滅」「最終的な安定普及」といった共通のパターンを経て定着することから、それぞれの技術がこのハイプサイクルのどこに位置するのかを示した調査資料だ。1995年からグローバル版を展開している。
「過度の期待のピーク」にあるのは「5G」「エッジアナリティクス」など
今回の「先進技術におけるハイプサイクル2019年版」では、2018年版(※)以前と大きく顔ぶれを変えた他、「幻滅期」や「啓蒙(けいもう)活動期」「生産性の安定期」にプロットされた技術が少なかったという点が特徴だといえる。技術のフェーズが大きく変わりつつあり、黎明期のさまざまな技術が多く紹介されている。
※)関連記事:デジタルツインや深層学習は“過度の期待のピーク”、ARは“幻滅期”のどん底
ガートナーでは5つの先進テクノロジートレンドとして「センシングとモビリティ」「オーグメンテッドヒューマン」「ポストクラシカルなコンピューティングとコミュニケーション」「デジタルエコシステム」「高度なAIとアナリティクス」の5つを挙げ、基本的には現在注目されている「自律走行」「AI」「量子コンピュータ」「5G」「デジタル変革」「IoT」などのトレンドが継続するという見方を示した。
「過度の期待のピーク期」の頂点にあるのは「5G」となった。2017年版、2018年版ともに「深層学習」が頂点となっていたが、2019年版では表示されていない。「5G」については、2019年から日本でも実証サービスが開始、2020年からは商用サービスが開始される予定となっており、大きな期待が集まっている。しかし、実際にどういう活用で生きるのかが見えるのは開始以降になるために、2020年以降は幻滅期に陥る可能性もある。
「バイオチップ」や「AI PaaS」などは2018年版から引き続き「過度の期待のピーク期」に位置付けられている。また、新たに「過度の期待のピーク期」に入ったのは、「レベル5自律走行」「エッジAI」「エッジアナリティクス」などとなる。クラウドに対する動きとして「エッジコンピューティング」に大きな注目が集まり、エッジでのAI処理やデータ分析に大きな期待が集まっている状況を示しているといえる。
一方で興味深いのが「自律走行」についてである。「レベル4自律走行」は2018年版に引き続き「幻滅期」に位置付けられているが、「レベル5自律走行」については「過度の期待のピーク期」で大きな期待が集まっているという。「レベル4」が現実化する中で、規制や安全性の問題などでさまざまな壁にぶち当たる一方で、完全自律運転の実現への期待は引き続き高いという状況が見えてくる。
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