物流の第4次産業革命「Logistics 4.0」とは何か:サプライチェーンの新潮流「Logistics 4.0」と新たな事業機会(1)(3/3 ページ)
物流ビジネスへの注目が日増しに高まる中、新たなイノベーションによって、物流の第4次産業革命ともいえる「Logistics 4.0」が起きつつある。本連載では、Logistics 4.0の動向解説に加え、製造業などで生み出される新たな事業機会について紹介する。第1回は、Logistics 4.0までの物流におけるイノベーションの変遷を解説する。
Logistics 4.0――物流の装置産業化
そして、現下進みつつある第4の革新こそ、「Logistics 4.0」です。その要点は、冒頭に述べた通り、「省人化」と「標準化」による「物流の装置産業化」にあります。
「省人化」とは、物流の各領域において「人の操作や判断」を必要とするプロセスが大きく減少することを指します。例えば、自動運転が実用化すれば、ドライバーがいなくても荷物を届けられるようになります。小口の宅配物はドローンで運ばれるようになるかもしれません。ロボットの性能が向上すれば、倉庫の中で荷物を棚から取り出したり、梱包したりする作業は、「人の仕事」ではなくなるはずです。つまるところ、物流オペレーションの主体が人から機械やシステムに置き換わるわけです。その機械やシステムを購入しさえすれば、誰でも同じことができるようになる。「人や会社によるオペレーションの差」は限りなく小さくなっていくはずです。
「標準化」とは、物流に関するさまざまな機能・情報がつながることで、物流会社や輸送ルート、手段などをより柔軟に組み替えられるようになることを指します。例えば、トラックや倉庫を複数の事業者が共用することも容易となります。サプライチェーンの上流から下流までの情報がつながれば、在庫や機会損失を極限まで減らせるはずです。多様な選択肢の中から最適なルート、輸送手段を選び出す役割はAIが担うようになるでしょう。物流会社としては、これらの機能・情報のネットワークにつながっていることが重要となります。つながっていなければ、選ばれなくなるからです。より多くの荷主、物流会社と機能・情報を共有できる「オペレーションの均質性・柔軟性」が問われるようになるはずです。
「省人化」と「標準化」が進むと、物流は装置産業化していきます。「新しいサービスを設計する」「対面でのコミュニケーションを必要とする」「不測の事態に対応する」といった、人の英知や存在が重要であり続ける領域もありますが、「運ぶ」「荷役する」「梱包する」「手配する」といった基本オペレーションは、「人の介在をほとんど必要としないインフラ的機能」となるからです。
では、物流がインフラ的存在に変わることで、調達・生産から小売・消費までのサプライチェーンの現場でどのような革新が起きようとしているのでしょうか。次回、まずは、調達・生産プロセスを対象に、その革新的進化の現状を紹介します。
筆者プロフィール
小野塚 征志(おのづか まさし) 株式会社ローランド・ベルガー パートナー
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士総合研究所、みずほ情報総研を経て現職。ロジスティクス/サプライチェーン分野を中心に、長期ビジョン、経営計画、成長戦略、新規事業開発、M&A戦略、事業再構築、構造改革等を始めとする多様なコンサルティングサービスを展開。2019年3月、日本経済新聞出版社より『ロジスティクス4.0−物流の創造的革新』を上梓。
https://www.rolandberger.com/ja/Locations/Japan.html
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