インテルが低コストな物流ソリューションを本格展開、日通も採用:物流のスマート化
インテルは2019年3月28日、東京都内で記者会見を開催し、物流業界向けIoT(モノのインターネット)ソリューション「インテル コネクテッド・ロジスティクス・プラットフォーム(インテル CLP)」を日本市場で本格展開すると発表した。
インテルは2019年3月28日、東京都内で記者会見を開催し、物流業界向けIoT(モノのインターネット)ソリューション「インテル コネクテッド・ロジスティクス・プラットフォーム(インテル CLP)」を日本市場で本格展開すると発表した。同ソリューションは使い捨ても可能な無線センサーを用いることが特徴で、輸送貨物の情報をリアルタイムかつ低コストに可視化する。
インテルでインダストリー事業本部長を務める張磊(ちょう らい)氏は、物流業界は国際的に輸送品質の向上が課題になっていると説明する。輸送貨物は毎年全体の約30%が損傷や遅延、そして盗難の被害にあっており、盗難だけでも毎年6兆円もの経済損失が発生。そのような状況で、貨物の輸送状態や位置情報をリアルタイムに確認したいという声が荷主から多く集まっているという。
このような荷主のニーズを受けて、物流各社はITベンダーとタッグを組み物流可視化ソリューションの開発、提供を始めている。インテル CLPも物流可視化ソリューションの1種となり、輸送貨物に取り付けられた無線センサーデバイスで位置、温度、衝撃、傾きなどの輸送荷物が安全に輸送されているかを確認できるデータを収集する。
データはゲートウェイを経由してクラウドに送信され、荷主はクラウド上で動作するダッシュボードによってサプライチェーンの可視化、分析を行うことができる。「サプライチェーンをエンドツーエンドで可視化し、企業の迅速な意思決定や物流コストの検証も可能とする」(張氏)サービスだ。
日本市場では既に多くの物流可視化ソリューションが存在しているが、張氏は競合と比較して「コストとリアルタイム性」に強みを持つと語る。インテル CLPで用いる無線センサーデバイスは長距離通信機能を搭載しておらず、通信距離が約10m程度の近距離無線通信でゲートウェイと通信を行う。また、それぞれのセンサーデバイスはマルチホップ通信が可能で、一定量のデータはデバイス内で保存できるためゲートウェイ設置数も削減できる。
張氏は「低価格なセンサーデバイスとしたので使い捨ても可能だ。リバースロジスティックス(サプライチェーンをさかのぼる物流)によるデバイス回収コストも削減できる」と説明した。ゲートウェイは物流拠点に設置される他、トラックや船、列車、飛行機といった輸送機関への設置にも対応。ゲートウェイはエッジ上での簡単な分析機能も持っており、リアルタイムでの可視化も確保する。
インテル CLPの日本企業採用事例も同時に発表され、日本通運が2019年2月から提供開始した輸送状況可視化サービス「Global Cargo Watcher Advance」に同ソリューションが用いられていることを明かした。
張氏は、インテル CLPの今後の展開として「エコシステムを形成し、日本の物流ニーズに合わせた機能拡張を行っていく」と語り、医薬品や精密機器輸送に特化したソリューションの提供も検討するとしている。
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