呼気ガス分析を用いた簡便で非侵襲的な肺高血圧症の判別法を発見:医療技術ニュース
東北大学は、座った姿勢から寝た姿勢への姿勢変化と呼気ガス分析を組み合わせ、肺動脈性肺高血圧症と慢性血栓塞栓性肺高血圧症の判別が非侵襲的に可能なことを示した。
東北大学は2019年7月3日、座った姿勢(座位)から寝た姿勢(臥位)への姿勢変化と呼気ガス分析を組み合わせ、肺動脈性肺高血圧症と慢性血栓塞栓性肺高血圧症の判別が非侵襲的に可能なことを示したと発表した。本研究は、同大学大学院医学系研究科 教授の上月正博氏らの研究グループによるものだ。
肺動脈性肺高血圧症と慢性血栓塞栓性肺高血圧症は、よく似た症状を示すために判別が難しいという。従来の診断では、心臓超音波検査や右心カテーテル検査、胸部CT検査などさまざまな検査が必要で患者への負担も大きい。
健常者では、座位から臥位になると肺への血流量が多くなる肺血流再分配が起こるが、肺高血圧症患者では肺血管が狭窄または閉塞するため肺血管予備能が低下し、座位から臥位へなっても肺血流再分配が起こらない。本研究では、肺高血圧症患者で姿勢変化による肺血流再分配が減少あるいは起きないことに注目した。
検査の結果、肺高血圧症でなかった患者と新たに肺高血圧症と診断された肺高血圧患者に対して、右心カテーテル検査や心臓超音波検査、血液生化学検査、6分間歩行距離、呼気ガス分析などを実施した。その結果、呼気ガス分析によって肺高血圧症の診断や肺動脈性肺高血圧症と慢性血栓塞栓性肺高血圧症の区別ができた。
呼気ガス分析では、肺高血圧症患者では座位から臥位への姿勢変化に伴う呼気終末二酸化炭素分圧の値が非肺高血圧症患者より低下し、姿勢変化に伴う二酸化炭素換気当量の変化量から肺動脈性肺高血圧症と慢性血栓塞栓性肺高血圧症が区別できることも明らかにした。
本研究での検査法は、患者への負担が少ない肺高血圧症の検査法として医療施設で手軽に導入でき、肺高血圧症の早期発見、早期治療につながると期待される。
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