ニュース
脳からの神経信号が肝臓の再生を促す仕組みを解明:医療技術ニュース
東北大学は、肝臓傷害時に、脳からの神経信号が緊急に肝臓再生を促す仕組みを解明した。また、重症肝臓傷害の際に、この仕組みを促すことで、生存率を回復させることに成功した。
東北大学は2018年12月14日、肝臓傷害時に、脳からの神経信号が緊急に肝臓再生を促す仕組みを解明したと発表した。また、重症肝臓傷害の際に、この仕組みを促すことで、生存率を回復させることに成功した。同大学大学院医学系研究科 教授の片桐秀樹氏らの研究グループの成果となる。
研究グループは、マウスの肝臓の70%を切除して、重症の肝臓傷害を起こす実験を実施した。脳からの信号は、自律神経の1つである迷走神経によって肝臓に届き、迷走神経がアセチルコリンを分泌して肝臓内の免疫細胞(マクロファージ)を刺激し、インターロイキン6(IL-6)の分泌を促した。さらに、IL-6が肝臓細胞内のシグナル伝達経路を活性化して、肝臓の再生を促進することが分かった。
この多段階の仕組みは、肝臓内に多く存在するマクロファージを刺激し、神経信号を肝臓全体に効率よく伝達するために重要だと考えられる。さらに、この神経信号がないと重症肝臓傷害時の生存率が低下すること、その状態でIL-6が肝臓細胞内のシグナル伝達経路を活性化させると、生存率が回復した。
今回発見した仕組みを制御すれば、肝臓がん手術の際にがんを含んだ広範囲の肝臓を切除することが可能となる。根治に向けて、切除手術後の合併症が少ない治療法の開発につながることが期待される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 脂肪肝の発症メカニズムを解明
大阪大学は、肝臓でタンパク質Rubiconの発現が上昇し、オートファジー(細胞内の分解機構)を抑制することが、脂肪肝の原因であることを明らかにした。 - 肝臓がんを抑制する新規化合物を同定
新潟大学は、肝細胞がんが増殖する仕組みを解明し、その仕組みを打ち消す新規化合物により、肝細胞がんの悪性化を抑制することに成功したと発表した。また、それが既存の抗がん剤の効果を高めることも分かった。 - 肝硬度測定と超音波検査に1台で対応する超音波診断装置を発売
GEヘルスケア・ジャパンは、肝硬度の測定機能「FibroScan」モジュールと超音波診断装置を一体化した超音波診断装置「LOGIQ S8 FS」を発売した。肝硬度測定と超音波検査を1台で行える。 - 臓器模型を新開発の専用材料で製作、3Dプリンタで金型製作するデジタルモールドが医療へ
ストラタシス・ジャパン(以下、ストラタシス)は「第29回 設計・製造ソリューション展(DMS2018)」(2018年6月20〜22日、東京ビッグサイト)において、実質臓器模型が製作出来る「デジタルモールド・メディカル」を披露した。工業部品の射出成形およびプレス成形用の「デジタルモールド」に長野県内の食品メーカーの素材技術を加えて製作する技術だ。 - 摘出臓器の長期保存・機能蘇生に関する共同研究を開始
SCREENホールディングスは、理化学研究所とオーガンテクノロジーズと、移植治療を目的とした臓器の長期保存および機能蘇生を可能にする、次世代臓器灌流培養システムの装置化に関する共同研究を開始した。 - 生存する細胞を含む組織や臓器をバイオ3Dプリンタで造形する技術
大阪大学は、細胞の生存をほとんど損なわずに、細胞を含んだ立体構造物をインクジェット式のバイオ3Dプリンタで造形できる技術を開発した。再生医療分野への貢献が期待される。