不安や恐怖に関わる神経核に性差を発見:医療技術ニュース
東北大学が、不安や恐怖の神経情報を処理する神経核にメス優位な性差があることを発見した。女性に多い不安障害のメカニズム解明につながることが期待される。
東北大学は2019年2月13日、不安や恐怖の神経情報を処理する神経核に、メス優位な性差があることを発見したと発表した。同大学大学院情報科学研究科 教授の井樋慶一氏らの研究による成果だ。
ヒトを含む動物が不安や恐怖など危機を感じた時、危機的状況下での瞬時判断は、脳内の複数の神経集団が協調して処理している。中でも、扁桃体や分界条床核の働きが特に重要となる。
不安や恐怖に関与した行動を制御すると言われるコルチコトロピン放出因子(CRF)含有ニューロンは、ラットにおいては分界条床核の吻側(前方)に集中していることが知られている。しかし、マウスではCRFの可視化は困難だったため、CRFニューロンの分布は明らかになっていなかった。
今回の研究では、crfプロモーターを利用した遺伝子改変マウスを用いることで、マウス分界条床核におけるCRFニューロンの分布を確認できた。その結果、ラット同様にCRFニューロンが吻側、特に背外側部に集まっていることが分かった。背外側部はオスよりもメスで体積が大きく、神経細胞数も多かった。また、この領域にはストレスホルモンも存在するが、このホルモンを含んでいる神経細胞もメスに多く見られた。
これまで、分界条床核の主核(尾側:後方)はオスの方が大きく、オス優位な性的二型核であることが知られていた。今回、吻側にメス優位な性的二型核が発見されたことで、分界条床核は、吻と尾それぞれの方向で細胞が雌雄異なる構造を持つことが明らかになった。
近年、罹患率が増加している不安障害は女性に多い傾向があるという。今回明らかになった神経構築やストレスホルモンの発現の差が、罹患率の性比に影響している可能性もある。同研究の発展により、不安障害のメカニズム解明が期待される。
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