真にデジタル化しなければ、モビリティは生き残れない!:和田憲一郎の電動化新時代!(34)(4/4 ページ)
最近、筆者が若干勘違いしていたことがあった。デジタル化とビッグデータ化である。どちらかといえば、アナログに対するデジタルのように、ビッグデータは単にデータを集積したものという理解だった。しかし、最近、幾つかの訪問や体験を通して、デジタル化やビッグデータ化がこれまでとは全く違った局面を迎えているのではないかと考えた。その結果、移動手段であるモビリティは将来デジタル化しないと生き残れないと思ったのである。なぜこのような考えに至ったのか、今回述べてみたい。
将来の都市像の在り方は
日本にいるとあまり感じないが、貴州や北京のような幾つかの都市で、AIやビッグデータを活用して地殻変動が始まろうとしているように思える。これまで都市と言えば、歴史的には軍事、交通、産業など要衝を中心に発展してきた。欧州の主要都市は古代ローマの軍団基地だったところも多く、中国でも、深センなどを除くと古の都を起点にしている。日本も多くは城下町として発展し、江戸から東京に引き継がれている。
しかし、将来の都市像を考えると、表面上は従来型都市形態と変わらないものの、都市を形成する上で、幾つかの要素が追加として必要となってくるのではないだろうか。つまり、ますます都市に人口が集中することに対応したモビリティの効率化や利便性向上であり、そのためにはAIを活用した都市管理システムや都市交通システムが求められる。しかし、実際にそれを動かすためには、ビッグデータの基盤とマネジメントが必要だ。
今後、人々が住みよい街であるか否かは、黒子としてビッグデータとマネジメントが支え、それを都市管理システムや都市交通システムが機能的に稼働できるかに懸かっているように思える。そして、パラドックス的かもしれないが、ビッグデータとマネジメントで都市管理システムや都市交通システムを支えようとすればするほど、実際に動くモビリティはデジタル化していないと使い物にならない。
モビリティがコネクテッド機能を備えるだけでは不十分であり、位置情報や車速のみならず、残存エネルギー量や目的までの移動距離など内部の状況までも把握することで、移動を都市として予測、推定しながら全体最適を実現できることだろう。
よく近未来の自動車はCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の時代だといわれる。クルマを中心に見ればそうかもしれないが、都市に住む人々はクルマが全てではなく、もっと包括的で効率的な移動を望む。都市やそこに暮らす人々から必要とされるとき、モビリティもそれにあった形に変わっていかないと生き残れないのではないだろうか。今日の日本は、図7にある表面上のレイヤー1層、2層(それもデジタルモビリティは中途半端な状態)のみで推し進めようとしているところに、課題があるように思える。
筆者紹介
和田憲一郎(わだ けんいちろう)
三菱自動車に入社後、2005年に新世代電気自動車の開発担当者に任命され「i-MiEV」の開発に着手。開発プロジェクトが正式発足と同時に、MiEV商品開発プロジェクトのプロジェクトマネージャーに就任。2010年から本社にてEV充電インフラビジネスをけん引。2013年3月に同社を退社して、同年4月に車両の電動化に特化したエレクトリフィケーション コンサルティングを設立。2015年6月には、株式会社日本電動化研究所への法人化を果たしている。
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