急伸する5GとセルラーIoTの世界市場、日本はそうでもない?:製造業IoT(2/2 ページ)
エリクソン・ジャパンが2019年6月に発表した「エリクソン・モビリティレポート」によると、5Gの導入が海外で進んでおり、2024年に88億となる全世界の携帯電話加入契約数の22%にあたる19億が5Gになると予測している。セルラーIoTについても、年率約27%で増加しており、2024年には41億個に達するという。
プライベートLTEとローカル5Gが注目を集める4つの理由
また、現在注目を集めている、企業や自治体が独自に自営のセルラー通信ネットワークを構築するプライベートLTEやローカル5Gについても説明した。
2024年に向けて、プライベートLTEやローカル5Gの導入を積極的に進めそうなのが、製造業、物流・倉庫、公共分野だ。藤岡氏は注目を集める理由について「サービス品質」「セキュリティ」「隔離された環境」「明確な責任の所在」を挙げる。
エリクソンが手掛けるプライベートLTEの事例としては、オランダRotterdam World Gatewayによる船舶からの積み荷を運搬するためのAGVの制御や、カナダAgnico Eagle地下金鉱内における通信、オーストラリアRoy Hillの露天掘り鉄鉱山における自動運転ダンプなどの制御、ドイツの電気自動車ベンチャーe.GOの工場内ネットワークがある。これらの多くで、ローカル5Gへの拡張が検討されている。
日本の通信キャリアの5G関連の計画は控えめ
米国や中国を中心にグローバルで普及が加速しそうな5Gだが、日本での普及はそれほど早く進まないのではという予測も出ている。例えば、既に5Gを導入している韓国の場合、数万の基地局を展開しており、加入契約数は100万を達成している。2019年末には加入契約数は500万、人口カバー率は90%に達するという計画も出ている。藤岡氏は「日本の通信キャリアは、それらと比べると控えめな計画になっているのは確かだ。ただし、海外の動向を見て計画を見直す可能性もある」と説明する。
また、日本国内におけるプライベートLTEやローカル5Gの動向については、「当社への引き合いが増えているものの、現時点では使用できる周波数の使い勝手があまりよくないなどの課題があり、一気に需要が伸びることはないだろう。まずはトライアルを進めて本当に使えるものなのかを見極め、利用周波数などの法整備が進んでからになるのではないか」(藤岡氏)としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 工場5Gは本当に使える? DMG森精機が伊賀事業所で今秋から実証開始
DMG森精機は、2019年秋から工場内でのローカル5Gの実証を始めることを明らかにした。5Gを工場内、もしくは工作機械で使用する価値を検証する。同社ユーザーイベント「伊賀イノベーションデー2019」(2019年7月9〜13日)では、5Gの紹介コーナーなども用意した。 - プライベートLTEからローカル5Gへ、ドイツの製造業は進化を止めず
脚光を浴びるIoTだが、製造業にとってIoT活用の方向性が見いだしきれたとはいえない状況だ。本連載では、世界の先進的な事例などから「IoTと製造業の深イイ関係」を模索していく。第5回は、ドイツの製造業が期待を寄せる「プライベートLTE」と「ローカル5G」にスポットを当てる。 - スマート工場が5G待望のキラーアプリに、期待集めるネットワークスライシング
脚光を浴びるIoTだが、製造業にとってIoT活用の方向性が見いだしきれたとはいえない状況だ。本連載では、世界の先進的な事例などから「IoTと製造業の深イイ関係」を模索していく。第5回は、5Gとスマートファクトリーの関係性にスポットを当てる。 - 「5Gは既に現実」、2019年から始まる商用サービス本格化に備えよ
エリクソン・ジャパンは、東京都内で「エリクソン・フォーラム2018」を開催し、次世代携帯電話通信技術である5GやIoT(モノのインターネット)の技術動向を紹介。併せて、エリクソンの戦略について説明した。 - 5Gはスマートフォンだけじゃない、クアルコム「全てをつなげるものだ」
クアルコム ジャパンは、クアルコム(Qualcomm)が展開する次世代通信技術の5G関連事業について説明。「導入が始まった5Gだが、2035年までに12兆3000億米ドルもの経済インパクトがあるという調査もある。この数字が正しいかとはともかく、5Gが非常に大きな影響を与えることだけは確かだ」(同社)。 - 「ローカル5G」が日本の5G市場をけん引する?
5Gと国内製造業の接点は、まずこの「ローカル5G」からかもしれません。