医療機器メーカーの世界展開を“デジタル化”で支援する包括的ソリューション:医療機器ニュース
シーメンスPLMソフトウェアは、医療機器メーカーのグローバル展開を成功へと導くデジタライゼーションの重要性と、医療機器産業における同社ソリューションに関する記者説明会を開催した。
シーメンスPLMソフトウェアは2019年5月29日、医療機器メーカーのグローバル展開を成功へと導くデジタライゼーション(以下、デジタル化)の重要性と、医療機器産業における同社ソリューションに関する記者説明会を開催した。
医療機器メーカーにとって避けては通れないデジタル化
医療機器産業の市場規模に目を向けてみると、近年、アジア太平洋地域の成長が著しく、中でも中国が市場をけん引し、年間20〜30%もの成長率で急速な伸びを示しているという。また、同社の試算によると、医療機器のOEM市場は2026年までに2000億円に達する見込みであり、アジア太平洋地域の中でも特に日系メーカーはその品質の高さから高い地位を確立できるだろうという。
こうした市場の成長性とともに、現在、医療機器産業では「4Ps(Preventive:予防、Predictive:予測、Personalized:パーソナライズ、Precision medicine:精密医療)」がトレンドになっており、これらを実現するテクノロジーとして、ロボティクス、AI(人工知能)、ゲノム医療、医療向け3Dプリンティングなどへの関心が高まっている。「医療機器メーカーがこうしたトレンドに対応し、グローバル展開を進めていくためにはデジタル化が不可欠だ。さらに、現在医療機器メーカーで大きな負担となっている法規制への対応などにおいても、デジタルへの対応が有効に働くことになるだろう」と同社 デジタル革新部長(医療技術) アジア太平洋地域 ヴァージニア・チャン氏は述べる。
現在同社は、医療機器メーカーのデジタル化を支援する各種ソリューションを提供しており、「世界の医療機器メーカートップ40社のうち39社で、シーメンスの何らかのソリューションが活用されている」(チャン氏)という。
医療機器メーカーのデジタル化を実現する包括的なソリューション
では実際に、医療機器メーカーはどのようにしてデジタル化を推進すべきなのか。これについて、同社 医療機器・製薬業界担当業界戦略ディレクターのジェームズ・トンプソン氏は「医療機器開発のイノベーションライフサイクルにおいて、企画、製造、活用の各段階におけるデジタルツインを実現し、それを1つのデジタルスレッドに統合することが重要だ。こうすることでプロセス間の距離が短くなり、イノベーションライフサイクル全体にかかる時間を大幅に短縮できる」と説明する。
同社はこのデジタルスレッドを実現するために、統合アプリケーションライフサイクル管理(ALM)システム「Polarion」、製品ライフサイクル管理(PLM)システム「Teamcenter」、製造実行システム(MES)「Camstar」、IoTオペレーティングシステム「Mindsphere」の4つのプラットフォームを展開し、医療機器メーカーのデジタル化を推進する包括的なソリューションとしての“青図”を描いている。
説明会では、このうちPolarion、Teamcenter、Camstarにフォーカス。まず、規制当局のガイドラインに準拠した医療機器開発向けテンプレートをPolarion上で構築し、それをプラットフォームとして活用することで、迅速な製品開発を可能にするインテリジェントデザインコントロールについて紹介。また、Teamcenterがカバーする製品、製造の領域においてデジタルツインを実現することで、品質と信頼性を早期に作り込むことが可能になる点を強調した。そして、Camstarの活用では100%のペーパレス化が実現し、作業がミスなく確実に行われるようになるなど、現場力の向上による競争力強化(オペレーショナルエクセレンス)が図れるという。
さらに、トンプソン氏は医療分野においてもその活用が期待されるアディティブマニュファクチャリング(以下、AM)について触れ、「AMを有効活用し、真の価値を発揮していくためには、製品と製造のデジタルツインを実現し、それらを1つのデジタルスレッドに統合して情報を密に連携させることが不可欠だ。医療分野におけるAMの活用は、いかにデジタル化が重要であるかを示す良い例といえる」と強調した。
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