自動車部品製造業が「見える化」システムを開発しITベンダーになるまで:MONOist IoT Forum 大阪2019(後編)(3/3 ページ)
MONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパン、TechFactoryの、アイティメディアにおける産業向け5メディアは2019年1月22日、大阪市内でセミナー「MONOist IoT Forum in 大阪」を開催した。後編ではi Smart Technologies CEOの木村哲也氏の講演「1時間で始まるスマートファクトリー」とその他のセッションの内容をお伝えする。
スマートファクトリーやIoT活用の具体的な事例を紹介
「MONOist IoT Forum in 大阪」では、ここまで紹介してきた基調講演、特別講演、ランチセッションに加え、5本のセッション講演も実施した。その様子をダイジェストで紹介する。
課題に直結するIoT活用を訴えた東京エレクトロンデバイス
東京エレクトロンデバイスは「あなたの『課題』は何ですか? 〜今のIoT課題を乗り越えて次のステージへ〜」をテーマとし、スマートファクトリーやIoT活用における「実現に向けての壁」の乗り越え方について訴えた。
製造業のIoT活用では、PoC(概念実証)は盛んに行われているが、本番での稼働に至らないケースが数多く存在する。これらの要因としては、データ活用の専門家不足、データの精度、投資効果などがあるとされるが、東京エレクトロンデバイスでは課題を精査していくことが重要だと訴えた。
東京エレクトロンデバイス 第一営業部 担当部長の中村琢哉氏は「課題を整理すれば、経営層が考える課題は事業課題であり現場であれば実現課題や運用課題などである。どの課題を解決したいのかという目的に応じたIoT設計が必要だ」と述べている。
IoTに必須となるセキュリティ対策の“実行”を訴えたSplunk
Splunk Services Japanは「IoTセキュリティは『何をすべきか』から『どう実行すべきか』へ〜Splunkで答えが見えるIoTセキュリティ対策とは〜」をテーマとし、IoTやスマートファクトリーで必須となるセキュリティ対策で取るべき方策を示した。
Splunk Services Japan セールスエンジニアリング本部 シニアセールスエンジニアの矢崎誠二氏は「IoT関連市場は拡大し続けており、これらをターゲットとするサイバー攻撃も激増している。『何をすべきか』と方法をじっくり考えるようなフェーズではなく、具体的に『どうすべきか』と次々に具体的に実行していくフェーズに入っている」と強調した。
具体的な方策としては、欧州やその他地域でのガイドラインを参照することを訴えた他、設計フェーズでセキュリティを組み込む点やセキュリティ対策の優先順位を付けておく点、必要がないところは接続しないという判断などの重要性を訴えた。
日常のサイバーリスク管理の重要性を強調したテナブル
テナブルネットワークセキュリティは「『つながる』がキーワードになったIoT時代の製造業のリスク管理とは」をテーマとし、「つながる」が必須となるIoTやスマートファクトリーに対し、日常的にサイバーリスク管理を行う重要性を訴えた。
テナブルネットワークセキュリティ Security Engineerの金城学氏は「2017年に発見された脆弱性の数は1万5037個になる。サイバー攻撃には未知の脅威に対する攻撃もあるにはあるが、大半は既に一般的に公開された脆弱性に対する攻撃である。攻撃を受ける面が従来に対し圧倒的に広がる中、全てを完璧にカバーするのは不可能である。日常的に脆弱性に対しリスク分析を行い、優先度を付けて対策を進めていくことが重要だ」と語った。
制御システムセキュリティの重要性を訴えた日立ソリューションズ
日立ソリューションズは「つながる時代のセキュリティ〜ITとOTのセキュリティ対策〜」をテーマとし、制御システム(OT)におけるセキュリティの難しさと実現方法について紹介した。
制御システムは従来、インターネットに結ばず閉域網で使用されることがほとんどだったが、スマートファクトリー化などが進む中で、インターネット接続などが必須となり、サイバー攻撃の脅威にさらされる状況となっている。さらに自社工場だけでなくサプライチェーン全体に影響をもたらす可能性なども生まれている。
これらに対し、日立ソリューションズ セキュリティマーケティング推進部部長の扇健一氏は「OTでは実際にさまざまな業務を運用しながらそれに影響を与えないようにセキュリティ対策を行う必要がある。全体を完璧にやろうとしても難しく、事業被害のリスクをベースに優先度を付けて取り組むことが重要だ」と語っている。
「デジタルツイン」の価値と効果を訴えたアンシス
アンシス・ジャパンは「リアルとシミュレーションがつながるDigital Twin」をテーマとし、「デジタルツイン」がもたらす新たな価値を訴えた。
デジタルツインとは、“デジタル世界における現実世界の双子”を意味する。物理的な機器がIoT化することで、リアルタイムでさまざまな情報が取得できるようになるため、仮想空間上でリアルの物体の精緻なモデルを作ることだ。仮想空間上でシミュレーションなどを実施することで、リアルの世界に影響を与えずに最適な判断が行えるようになる。
アンシス・ジャパン Lead Application Engineer 鈴木英次郎氏は「デジタルツインを構築することで、実機の監視をIoTプラットフォーム上で行えるようになる。さらにバーチャルセンサーなどで実際では計測するのが難しい測定などを行える。リアルな情報を基にバーチャルテストを行えるために、開発の高度化や予知保全などさまざまな活用が可能だ」と語っている。
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