リチウムイオン電池を車載用にするための幾つものハードル、そして全固体電池へ:いまさら聞けない 電装部品入門(27)(3/3 ページ)
クルマのバッテリーといえば、かつては電圧12Vの補機バッテリーを指していました。しかし、ハイブリッドカーの登場と普及により、重い車体をモーターで走らせるために繰り返しの充放電が可能な高電圧の二次電池(駆動用バッテリー)の重要性が一気に高まりました。後編では、ニッケル水素バッテリーの欠点だったメモリ効果をクリアしたリチウムイオンバッテリーについて紹介します。
次世代二次電池、最有力候補の全固体電池
性能面だけを見ればリチウムイオンバッテリーの普及によって、ハイブリッドカーの駆動用バッテリーは市場に求められるレベルに達しているようにも思えますが、リチウムイオンバッテリーが持つ不安定な構造をカバーするためのさまざまな制御システムが必須であることなどを考えますと、まだまだ改良の余地はあります。
もちろん電気自動車なども将来的に普及が見込まれていることから、さらなる高速充電化やコンパクト化は求められます。そこで現在最も有力だといわれているのが全固体電池という次世代二次電池です。電気を生み出す原理はリチウムイオンバッテリーと同様なのですが、内部に電解液を使用せず固体間でイオン交換を行うという構造が最も特徴的な部分です。
まだまだ研究が進められている領域である事と、非常にマニアックな世界になってしまいますので詳細な説明は割愛しますが、ここまでお話ししてきたリチウムイオンバッテリーの弱点であった可燃性電解液が不要になる他、非常に熱にも強くなるというメリットがあると考えられています。さらに、セル同士の直列配置も配線を使わないより直結に近い接続を行うこともあって、電気的な接触面積が圧倒的に増えるので、発熱抑制はもちろん、充電速度も飛躍的に向上すると考えられています。
とはいえ、全固体電池のメリットを全て網羅したものを量産化できるめどはまだ正式に立っておらず、今後の動向に注目といった所ですね。もしもこれらを全て網羅できた全固体電池が普及することになれば、一般的な給油と大差ない速度で満充電できる電気自動車が登場することも夢ではなくなるかもしれません。
石油燃料からの代替を世界的に進めている昨今、全固体電池への期待は相当大きなものですので、世界に先駆けて日本が第一人者になってくれることを期待しています。
筆者プロフィール
カーライフプロデューサー テル
1981年生まれ。自動車整備専門学校を卒業後、二輪サービスマニュアル作成、完成検査員(テストドライバー)、スポーツカーのスペシャル整備チーフメカニックを経て、現在は難問修理や車両検証、技術伝承などに特化した業務に就いている。学生時代から鈴鹿8時間耐久ロードレースのメカニックとして参戦もしている。Webサイト「カーライフサポートネット」では、自動車の維持費削減を目標にしたメールマガジン「マイカーを持つ人におくる、☆脱しろうと☆ のススメ」との連動により、自動車の基礎知識やメンテナンス方法などを幅広く公開している。
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