AI導入が着実に進む国内企業、しかし利用用途は内向き:人工知能ニュース
IDC Japanは2019年5月21日、国内の「AI(人工知能)システム」市場予測を発表した。2018年の同市場規模はユーザー企業支出ベースで532億円と推定し、2023年までの期間に年間平均成長率(CAGR)が46.4%のペースで市場拡大が進むと予測している。
IDC Japanは2019年5月21日、国内の「AI(人工知能)システム」市場予測を発表した。2018年の同市場規模はユーザー企業支出ベースで532億円と推定し、2023年までの期間に年間平均成長率(CAGR)が46.4%のペースで市場拡大が進むと予測している。
同日に開催された記者会見では、IDC Japanのソフトウェア&セキュリティ リサーチマネージャーを務める飯坂暢子氏が登壇し、市場予測と国内ユーザー企業に対して実施したAIシステムの業務導入に関するアンケート結果について解説を行った。
同社はAIシステムの定義について、機械学習をベースとし人間の意思決定を補助、拡張するものと定めている。今回の調査では、AIを処理するサーバやデータを蓄積するストレージなどの「ハードウェア」、AIのコア機能を提供するプラットフォームやアプリケーションで構成される「ソフトウェア」、AIシステム構築のためのコンサルティングサービスやアウトソーシングで構成される「サービス」を対象としており、スマートスピーカーなどAIを活用したB2C製品などは調査に含まれていない。
同社では、グローバルにおけるAIシステム市場が2019年の358億米ドル規模から、2022年には792億米ドル規模へと飛躍的に伸張すると予測している。日本においてもAIシステムの導入が急速に進んでいるとし、2023年には国内のAIシステム市場が3578億円に達すると予測する。
セグメントごとの動向では、予測期間の初期でユーザー企業のPoC(概念実証)が進むため、ITコンサルティングやビジネスコンサルティングなどのサービス市場の比率が高くなる。一方で、予測期間の後半はソフトウェアへのAI組み込みが進むため、ソフトウェア市場における2018〜2023年のCAGRは53.4%にも達し、「AIシステム市場はソフトウェアがけん引する」(飯坂氏)。2023年には同セグメントが1619億円規模の市場となる見込みだ。
また、国内ユーザー企業に対して実施したAIシステム導入に関する調査結果からも、AIシステムの業務活用が進んでいることが示されたとする。2018年の前回調査時と比較して、全社もしくは事業部門での利用や社内で広くPoCを選択した企業が増え、導入に向けて調査中と回答した企業は大きく減少している。
一方で、AIシステム導入に対する課題については、戦略がない、リーダー不足、組織体制がない、といった経営や人事面のハードルを指摘するユーザー企業が多くいたという。飯坂氏は「『戦略がない』と指摘した企業はAI導入フェーズにいる企業よりも拡張フェーズにいる企業が多い割合で存在するように、戦略がないこともシステム拡張時に問題となる。また、『データ収集』や『セキュリティ』を課題として挙げた企業は想定よりも意外に少ない。さほどユーザー企業はこれらの点を問題視していないことも注目ポイントだろう」と述べる。
また、飯坂氏は「現在の国内ユーザー企業はAIシステムを働き方改革などの内部変革に向けて用いており、サプライチェーンやロジスティクス予測など外部変革を目的としたAIシステム活用は次点となっている」と指摘。デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現では内部変革と外部変革を連続的に実行していくことが重要とし、「海外企業は外部に向けて変革を推し進めているというのが特徴だ。国内企業もこういったプロセス変革を目指す必要がある」(飯坂氏)との認識を示した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 国内ロボット市場をけん引するのは製造業向け、2022年に2兆円近くまで成長
IDC Japanは2018年5月17日、東京都内で会見を開き、国内商用ロボティクス市場の動向について説明した。 - 深層学習による画像認識ソリューション市場は2021年度に551億円へ
ミック経済研究所は、深層学習を活用したAIによる画像認識ソリューションの市場の現状と展望を発表した。2021年度までに551億円市場になると予測する。 - 組み込みAIでスマート化の「死の谷」を克服、ルネサスがe-AIとSOTBでけん引
ルネサス エレクトロニクスがインダストリアルソリューション事業の戦略について説明。組み込みAI技術「e-AI」と超低消費電力プロセス技術「SOTB」の組み合わせにより「エンドポイントインテリジェンスを実現し、新市場を創造する」(同社 執行役員常務の横田善和氏)という。 - 中国の2018年AI関連投資、大手IT3社のBATを中心に4兆円規模へ
富士キメラ総研は、AI関連の中国における市場を調査した。2018年の中国におけるAI関連市場見込みは340億元で、2017年比で61.9%増になると見ている。 - グーグルはなぜ「オンデバイスAI」を志向するのか
グーグル(Google)は2018年11月21日、東京都内で会見を開き、同社のスマートフォン「Pixel 3/Pixel 3 XL」で採用したAI(人工知能)利用の方向性である「オンデバイスAI」について紹介した。 - ET展で組み込みAIはなぜ盛り上がらないのか
2016年、2017年に引き続き、エレクトロニクス/組み込み分野に詳しい大原雄介氏による「ET2018/IoT Technology 2018」の“獣道”レポートをお送りする。中国発の注目のArmチップや新たなLPWA規格などの展示があったものの、組み込みAI関連の展示は盛り上がらなかったようで……。