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グーグルはなぜ「オンデバイスAI」を志向するのか人工知能ニュース(1/2 ページ)

グーグル(Google)は2018年11月21日、東京都内で会見を開き、同社のスマートフォン「Pixel 3/Pixel 3 XL」で採用したAI(人工知能)利用の方向性である「オンデバイスAI」について紹介した。

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Google AIのブレイス・アグエラ・イ・アルカス氏
Google AIの特別名誉科学者であるブレイス・アグエラ・イ・アルカス氏

 グーグル(Google)は2018年11月21日、東京都内で会見を開き、同社のスマートフォン「Pixel 3/Pixel 3 XL」で採用したAI(人工知能)利用の方向性である「オンデバイスAI」について紹介した。

 会見には、グーグルのAI部門であるGoogle AIの特別名誉科学者であるブレイス・アグエラ・イ・アルカス(Blaise Aguera y Arcas)氏がビデオ会議で登壇し説明を行った。まず、イ・アルカス氏は、AIが注目される背景に半導体技術の進化における変曲点が大きな影響を及ぼしたことを指摘した。「1970年代から、1年半ごとにトランジスタ数が2倍になるというムーアの法則に従って半導体の微細化は進展した。実際に、1990年代に何部屋も使うシステムだったスーパーコンピュータと同じ性能の半導体が、ポケットに入るデバイスに用いられるようになっている」(イ・アルカス氏)。また、半導体の微細化によって消費電力の低減という効果も得られることで、駆動周波数の高速化という形での進化も進んでいった。

 このトレンドに大きな変化が訪れたのが2006年だ。駆動周波数の伸びが飽和したことにより、さらなる性能向上のために採用されたのが、複数のプロセッサコアを搭載するマルチコア化と処理の並列化という技術だった。ただし、これについても、必ずしもコアの数に比例して性能が伸びるわけではないという課題を抱えていた。

さまざまなことが起こった2006年

 そして同じく2006年、現在AI技術が注目される要因となった、人間の脳の仕組みを基にしたニューラルネットワークが大きな進化を迎えた。イ・アルカス氏は「もともと脳科学を専門としていた私が現在の仕事を手掛けているように、ニューラルネットワークを契機に、脳科学とコンピュータサイエンスの融合が始まった」と強調する。

2006年にさまざまなことが起こった
2006年に半導体技術のマルチコア化と処理の並列化への移行、ニューラルネットワークの大きな進化が起こった(クリックで拡大) 出典:グーグル

 そして脳が約1000億のニューロンによって思考を行うように、ニューラルネットワークも並列コンピューティングとの相性が良い。ニューラルネットワークが大きく進化した2006年は、それをコンピュータで扱うためのマルチコア化や並列処理の技術が大きく立ち上がった時期でもあったのだ。

 ニューラルネットワークを扱う上でCPUよりも適しているとして一気に市場を拡大したのがGPUだ。最近では、GPUよりもさらに適したAIチップを各社が開発するようになっている。実際にグーグルも、サーバやクラウドで用いる「TPU」や、組み込み機器向けの「Edge TPU」を発表している※1)、※2)。ニューラルネットワークの電力性能比について、GPUはCPU比で2.9倍だが、TPUは同83倍に達するという。

CPUとGPU、TPUのニューラルネットワークを処理する際の電力性能比
CPUとGPU、TPUのニューラルネットワークを処理する際の電力性能比 出典:グーグル

 イ・アルカス氏は「かつて、ニューラルネットワークの実用化以前は、コンピュータが得意としていた処理は、人間の脳が得意としないタイプの処理が中心だった。しかし、ニューラルネットワークを活用することで、視覚や言語といった人間の脳が得意とする領域にもコンピュータの活用領域が広がりつつある」と説明。さらに、これらのニューラルネットワークの需要拡大に合わせて「8年後には、ニューラルネットワークを扱う半導体によってトランジスタ総数の99%が占められるようになっているだろう」(同氏)と予測する。

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