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日産プロパイロット2.0、ステアリング手放しの実現には高精度地図が不可欠だった自動運転技術(2/2 ページ)

日産自動車は2019年5月16日、横浜市の本社で会見を開き、運転支援システムの第2世代「プロパイロット 2.0」の概要を発表した。2019年秋に日本で発売する「スカイライン」を筆頭に、海外市場や他のモデルでもプロパイロット 2.0を展開する。

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トライカムを採用、LiDARは現時点で不要

 日産自動車は、車線や道路形状、標識など高精度地図のさまざまな情報を車両の制御に用いることで、同一車線内でのハンズオフを実現するのは、「世界初」(同社)だとしている。高精度地図がなければハンズオフは実現していないという。また、高精度地図の活用と一口に言っても、道路の曲率しか制御に用いていないケースもあり、プロパイロット 2.0は高精度地図の多くの情報を基に制御している点が技術的な特徴だ。今後、他の車種にプロパイロット 2.0を展開するにあたっては、システムの二重化や高精度地図を更新するための車載通信機の搭載が必須となる。

 採用する高精度地図は、ダイナミックマップ基盤(DMP)が整備し、日本の高速道路全域を網羅するもの。この高精度地図に対し、車両の制御に必要な幾つかの情報をゼンリンが追加し、プロパイロット 2.0に採用する。DMPの高精度地図にゼンリンが追加した情報は、ゼンリン側でデータを更新する。日本全国の高速道路の高精度地図全てが「マップコントローラー」というユニットに保存され、車両に搭載される。マップコントローラーの地図は年に数回の頻度で、車載通信機を通じて自動配信するという。

 走行中の自車位置は、GPSに加えて、車載カメラの画像と高精度地図を照合することで推定する。車両の横方向で5cm以内、前後方向で1m以内の精度を確保したという。車載カメラでレーンが確認できない場合は、高精度地図の情報で補完しながら走行する。道路と自車位置の関係を高精度に把握することで、速度やステアリングの制御が従来以上に滑らかでスムーズになる。

 車両の周囲360度のセンシングに使用するのは、カメラ7個、ミリ波レーダー5個、超音波ソナー12個だ。レーダーとソナーは新開発の高解像度なものを採用した。7個のカメラのうち、4個はアラウンドビューモニター用に車両の近くを監視しており、残り3個が前方を監視する。前方監視用のカメラは画角や焦点距離の異なる3つのレンズを並べた「トライカム」だ。画像処理はMobileye(モービルアイ)の最新チップ「EyeQ4」で行う。


走行中の画像認識のイメージ(クリックして拡大) 出典:日産自動車

 トライカムは、前方を走行する車両とその速度、車線、高速道路上の構造物に加えて、障害物がなく走行可能なエリア(フリースペース)も検知している。画角が広いため、前方に割り込んできた車両への応答性が高いという。トライカムを製造するサプライヤーについては言及しなかったが、ZF傘下のTRWとみられる。

 今回、車両の周囲のセンシングにLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)は採用しなかった。その理由として、小さいサイズの対象物はカメラで検知できており、LiDARの検知性能がミリ波レーダーとカメラの統合処理で得られる情報を超えられていない点があると飯島氏は説明した。そのため、現時点のシステムにLiDARは不要だと判断した。

 今後の自動運転技術の進化について、飯島氏は「レベル3以上の壁はとても遠い。自動車メーカーとして事故の責任を負えると断言できる、完全自動運転でなければならない。レベル2を磨き続ける期間は長く続く」と語った。

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