HPCとAI性能を両立したポスト「京」のCPU、ウエハーが初公開:人工知能ニュース
富士通は2019年5月14日、同社のプライベートイベント「富士通フォーラム2019 東京」(2019年5月17日、東京国際フォーラム)の内覧会で、次世代スーパーコンピュータであるポスト「京」に搭載されるプロセッサ「A64FX」のウエハーが初公開された。
富士通は2019年5月14日、同社のプライベートイベント「富士通フォーラム2019 東京」(2019年5月17日、東京国際フォーラム)の内覧会で、次世代スーパーコンピュータであるポスト「京」に搭載されるCPU「A64FX」のウエハーが初公開された。
ポスト「京」は2021年〜2022年の共用開始を目標に開発が行われている。理化学研究所で現在運用中のスーパーコンピュータ「京」の後継機として、世界最高水準の汎用性と京の最大100倍となるアプリケーション実行性能を発揮する見込みとしつつ、消費電力を京の約3倍となる30M〜40MW程度に収めることを目標としている。
ポスト「京」のCPUであるA64FXは、富士通がこれまで長年手掛けてきたSPARC64アーキテクチャから脱却し、ベースISA(命令セットアーキテクチャ)にArmv8.2-A、SIMD拡張命令セットにSVE(Scalable Vector Extensions)を採用している。これによって電力効率の改善を実現しつつ、Armの豊富なソフトウェア資産をポスト「京」ユーザーが利用できることもメリットとなる。
また、A64FXではスーパーコンピュータ本来の用途であるHPC(High Performance Computing)性能の他、AI(人工知能)アプリケーションの実行性能も強化している。HPC用途で重要視されるFP64(64ビット浮動小数点)のピーク演算性能は2.7TFLOPS以上としつつ、AI用途で用いられることが多いINT8(8ビット整数)の演算ピーク性能は21.6TOPS以上と従来のSPARC64プロセッサから飛躍的に向上している。A64FXのトランジスタ数は87億8600万個で、7nm FinFETプロセスにより生産される。
富士通はポスト「京」の開発で培った技術を活用し、新型の商用スーパーコンピュータを製品化する予定だ。2019年度下期の販売開始を目指す。1ラックあたり384ノードが集積され、ラックあたりの理論演算性能は1PFLOPSを超える見込みだ。同社ではSPARC64プロセッサ向けソフトウェア資産を新型商用スーパーコンピュータ向けバイナリに変換するリコンパイラを提供する予定で、「われわれの既存スーパーコンピュータを利用するユーザーも、手間なく新型スーパーコンピュータに移行できる」(同社担当者)としている。アプリケーション開発者向けに計算用や通信用の各種ライブラリ、ミドルウェアも提供する予定だ。
同社では新型商用スーパーコンピュータの今後の展開として、エントリーモデルの開発や他ベンダーへの供給なども検討するという。
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