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コンビニやドラッグストアで進む電子タグ採用、リアル店舗データ化への挑戦リテールテックJAPAN 2019(2/2 ページ)

流通情報システムの総合展示会「リテールテックJAPAN 2019」の「流通システム標準化の最新動向」をテーマとしたセミナーに、経済産業省 商務情報政策局 商務・サービスグループ 消費・流通政策課 係長の加藤彰二氏が登壇。「サプライチェーン流通・消費情報の活用へ向けた取り組み」と題して「電子タグ1000億枚宣言」をはじめとする流通におけるデータ活用の方向性などについて、講演を行った。

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リアル店舗のデジタル化と「スマートストア構想」

 小売業が現在保有するデータは、POSやEDIなどにより量的には既に多くのものが集められる状況にある。しかし、実際には使えるデータというものは案外少ないという。そこで、使えるデータを増やすために、電波を用いてタグのデータを非接触で読み書きするRFIDや、空間でのモノや人の動きを解析するコンピュータビジョン、電子レシートなどを用いて、店内などのさまざまなデータをデジタル化し、それを標準化していつでも他の企業と連携しやすくすることを目標とする。

 これを店舗として落とし込んだのが、「スマートストア構想」で、最初からサプライチェーンと連携することを前提とし、店舗でのリアルな動きをデジタルデータ化することに取り組んでいる。

 店舗でのリアルな動きのデジタル化を実現するツールとしてRFIDに注目する理由は、複数のモノが一括に認識できることや、離れていてもモノが読めるなどの利点があるところだとする。一方でコストが高いところがデメリットとして残る。ただ、流通業者の中でも人手不足の問題が深刻化しているコンビニなどは実装したいという声も多く、省人化を進める方法の1つとして、RFIDの研究が開始された。

 既に実験店舗で実証実験もいくつも実施されてきている。実証実験では、セルフレジなどの結果は好評だったが、1枚10円以上するRFIDのコストの課題は残った。また、RFIDを貼り付ける作業に逆に人手がかかるという問題もある。さらにこの貼り付け作業をどこで誰が貼り付けるべきかという運用面での課題も見えた。

「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」と「ドラッグストアスマート化宣言」

 しかし、人手不足が深刻化し、新しい仕組みを取り入れないと将来の行き詰まりが見えていることから、コンビニエンスストアの大手5社が「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を行った。これは2025年までに、セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップ、ニューデイズの全ての取扱商品(推計年間1000億個)に電子タグを利用することについて一定の条件下で合意したものだ。

 また、日本チェーンドラッグストア協会も「ドラッグストアスマート化宣言」を策定。実現に向けて、まずは電子タグの研究に着手することとし、2025年までに、ドラッグストアの取扱商品に電子タグを利用することについて、一定の条件下で合意している。

 これらの宣言を実際に形にするには、最低でもRFIDの価格が1枚1円以下とならなければ現実的ではない。さらに、上流である製造側などでRFIDが商品に実装される仕組みを作ることが条件となっている。

 このRFIDのコストダウンについて加藤氏は「いくつかのソリューションが生まれており、あまり心配をしていない。十分に実現できると考えている」と考えを述べている。一方で、サプライチェーン全体でRFIDのメリットを共有できる仕組みを作る点については難しいという認識だとしている。また、2017年度の実証実験ではメーカーからは「電子タグを付けるのであれば、在庫情報の可視化に加えて、商品の1つ1つがIoTになることによる顧客へのサービス向上にもつなげたい」という要望があった。

 これらを受けて、2018年度はサプライチェーンの中でさらに付加価値を生み出すことに挑戦したという。コンセプトはRFIDだけでなくキャッシュレス、電子レシートなども統合してサプライチェーンの可視化、デジタル家電やWi-Fi、デジタルサイネージなどとの連携による価値創出に取り組んだ。特にカスタマージャーニー(顧客が購入に至るプロセス)の可視化を行うことに重点を置き、実証などを進めたとしている。

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