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24時間営業で食品を無人販売、RFIDタグは買い手と売り手に便利なのかイノベーションのレシピ(1/2 ページ)

三菱地所とSAPジャパンは2019年2月1日、新規ビジネス創出に向けて協業するためのシェアオフィス「Inspired. Lab」を東京都千代田区の大手町ビルに開設したと発表した。Inspired. Labに参画する大企業とスタートアップ企業は、三菱地所とSAPジャパンが提供する施設やメンターによるサポートを利用しながら、協働することができる。

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 三菱地所とSAPジャパンは2019年2月1日、新規ビジネス創出に向けて協業するためのシェアオフィス「Inspired. Lab」を東京都千代田区の大手町ビルに開設したと発表した。Inspired. Labに参画する大企業とスタートアップ企業は、三菱地所とSAPジャパンが提供する施設やメンターによるサポートを利用しながら、協働することができる。

 同施設では、指紋だけで支払いが完結する無人販売ショーケースによる飲食物の提供や、移動手段を必要とする人の元に自律走行で電動車いすを向かわせるサービスの実証実験がスタートした。

 無人販売ショーケースは、パナソニックとクラウド型生体認証技術を手掛けるベンチャーLiquidが共同開発したもの。パナソニックは、サプライチェーンの最適化に取り組む一環でRFIDタグの活用を進めている。無人販売ショーケースでは、実用的な環境でのRFIDタグの動作、サービスとしての利便性を検証する。

指紋認証で社員のみが冷蔵ショーケースを開けることができる(左)。中から商品を取り出し(中央)、商品を確認してから指紋認証と連動した決済で支払い(右)(クリックして拡大)

 冷蔵ショーケースの中には、飲み物や軽食などが陳列されている。ユーザーは指紋スキャナーに指を当てて冷蔵ショーケースのドアを開け、商品を取り出す。手に取った商品はRFIDタグでスキャンされ価格や個数が記録される。代金は、指紋認証と連動したLiquidの決済ソリューションを通じて銀行口座から引き落とされるシステムだ。

 無人販売ショーケース自体はさまざまな決済手段とも組み合わせることが可能だが、Liquidの指紋認証技術はInspired. Labの入退室などでのセキュリティに使用されているため、無人販売ショーケースの取り組みにもそのまま採用された。

高単価なナマモノで実験

 今回、ユーザーが取り出した商品の識別には画像認識は使用していない。画像認識では、いつ陳列した商品なのか分からないからだ。RFIDタグは将来的に量産効果によるコスト低減が見込まれるものの、現在は1枚当たり十数円程度と高価で、安価な商品に取り付けることは難しい。

 これに対し、パナソニックは「ナマモノで単価が高い食品など、廃棄ロスの影響が大きいものが向いているのではないか。売れ行きに合わせて供給を調整できることは売り手のメリットになると考えられるので、実証実験でもナマモノを扱う」(同社 コネクティッドソリューションズ社 現場プロセス本部 ロボティクスソリューションセンター AI・IoTソリューション部 部長の田川潤一氏)。


同じフロアのカフェが無人販売ショーケースを扱う。RFIDタグによるクラウド経由の在庫管理も、カフェで試してもらう(クリックして拡大)

 無人販売ショーケースで取り扱うのは、Inspired. Labが同じフロアで運営するカフェの商品だ。RFIDタグの貼付もそのカフェで行う。無人販売ショーケースには、500円のフルーツジュース、1000円の“食べる削り節”といった高単価の商品が並ぶ。今後、サンドイッチなどの調理品も無人販売で扱う。

 売れ行きはRFIDタグの情報を基にクラウド上で管理する。カフェの店員は、スマートフォン上で無人販売ショーケース内の商品の売れ行きを確認でき、それを基に商品の供給を調整することが可能だ。「店員がショーケースの中身を見に行けば済むほど近い距離にあるが、実際の飲食店と協力して感触を聞きながら実証を進められるのは便利だ。また、RFIDタグがビジネスに役立つと感じてもらえれば大きな収穫になる」(田川氏)。

 また、実証実験では、シェアオフィスの中で24時間利用できる無人販売ショーケースがどれだけ満足度を得られるか、どういった商品がユーザーに喜ばれるかなどについても検証する。それを踏まえて、無人販売の仕組みやユーザーインタフェースを改善する材料にしていく。無人販売ショーケースは、オフィスやホテルなど、無人販売が付加価値となる場所に向けてサービスとして提供していきたい考えだ。

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