アジア太平洋地域の製造業、AI採用で競争力が1.8倍に:製造マネジメントニュース
MicrosoftとIDCは、アジア太平洋地域の製造業における、AIについての調査結果を発表した。AIを採用し始めた企業は、今後3年間で競争力が1.8倍になると予測し、ビジネスリーダーの76%は、AIが今後数年での競争力の手段になると考えていた。
MicrosoftとIDCは2019年4月1日、アジア太平洋地域の製造業におけるAI(人工知能)についての調査結果を発表した。
同調査によると、AIを採用し始めた企業は今後3年間で競争力が1.8倍になると予測している。また、製造業におけるビジネスリーダーの76%がAIによって今後数年での競争力の手段になると考えている。
また、AIの採用によって「良好な顧客関係」「より高いマージン」「より高い競争力とビジネスアジリティ(機敏性)」がもたらされる。既にビジネスが17〜24%の範囲で改善しており、今後3年以内に少なくても1.7倍の改善が見込まれる。導入後の効果は、イノベーションの加速が2.0倍と最も高く、続いてマージンの上昇が1.9倍促進されると予測する。
同調査では、アジア太平洋地域の製造業のAI導入準備に関する6つの側面についても評価を実施した。「戦略」「投資」「(組織の)文化」「能力」「インフラ」「データ」のうち、「戦略」「文化」「データ」の面で特に改善の余地があるとしている。
戦略面では、AI戦略を適所で使用することでより広範な労働力を支援する必要がある。データに関しては、中央の分析チームだけがアクセスできる構造で、データの品質や用いるタイミングも特定の目的に向けたものである点が問題となっている。組織の文化については、ビジネスリーダーと従業員の6割近くで従業員がリスクを取りつつ、組織内で迅速に行動する権限を与えられていないと考えている。
AIが仕事に与える影響については、ビジネスリーダーの62%、従業員の77%が、AIが良い影響を与えると信じている。しかし、AIに必要なスキルは不足しており、特に「コミュニケーションと交渉スキル」「起業家精神とイニシアチブ」「適応力と継続的な学習」は、今後3年間で需要が供給を上回ると見込まれる。
Microsoftの製造業担当者は、AIのスキル不足に対応する上で、ビジネスリーダーは従業員がスキルを習得し、向上するための時間を作ることが優先だとし、AI対応の労働力は、将来的に莫大な利益をもたらすとしている。
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