ダイキンが開発中の3Dプリンタ向けフッ素樹脂「PFA粉体」の造形サンプルを公開:INTERMOLD 2019
ダイキン工業は「INTERMOLD 2019(第30回金型加工技術展)/金型展2019」に出展したアスペクトの展示ブースにおいて、3Dプリンタ関連技術として現在開発中の粉末床溶融結合法向けフッ素樹脂「PFA粉体」による造形サンプルを参考出品した。
ダイキン工業が開発を進める粉末床溶融結合法向けフッ素樹脂材料
ダイキン工業は「INTERMOLD 2019(第30回金型加工技術展)/金型展2019」(会期:2019年4月17〜20日、会場:東京ビッグサイト 青海展示場)に出展したアスペクトの展示ブースにおいて、3Dプリンタ関連技術として現在開発中の粉末床溶融結合法向けフッ素樹脂「PFA(パーフルオロアルコキシ)粉体」による造形サンプルを参考出品した。
フッ素樹脂は、優れた耐熱性や耐薬品性などを備えたスーパーエンジニアリングプラスチックであり、PFAはフッ素樹脂として広く活用されているPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)に匹敵する特性(連続使用温度260℃、ほぼ全ての薬品に侵されない)を有する“溶融成形可能な樹脂”として知られる。
空調機器メーカーであると同時に、フッ素化学メーカーでもあるダイキン工業は、長年フッ素樹脂製品の研究開発に取り組んできた。そのラインアップの1つとして、PFAのペレット(粒状の原料)も手掛けており、化学プラントで用いられる薬液配管のライニングや、半導体製造装置に用いられる継ぎ手やチューブなどに用いられているという。
その一環として、同社は数年前から3Dプリンティング技術でも使用できる粉体のPFAの研究開発を進めてきた。同社が開発を進めるPFA粉体は、流動性向上剤を添加しなくても良好なリコート(再塗装)性を有するPFA100%の白色粉体で、3Dプリントした造形品は柔軟性に優れ、曲げたりねじったりしても、手で元の状態に戻すことができる。
今回開発を進めているPFA粉体への期待として、同社説明員は「耐熱性、耐薬品性、柔軟性が求められる部品の製造やその試作、あるいは切削加工で作られたPTFE品の代替などでの利用が考えられる。また、多品種少量生産はもちろんのこと、形状についても従来の加工方式では難しかった複雑な形状も3Dプリンタであれば実現できる。具体的にどのようなアプリケーションに適用できるのか、長い目で見ていきたい」と述べる。
製品化のめどについては現在未定。国産業務用3Dプリンタ(粉末床溶融結合装置)を手掛けるアスペクトの協力の下、研究開発を重ねている最中だという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 3Dプリンタ初の液状ゴム材料、射出成形と同等物性で量産にも対応
ダウ・東レは、「第1回 次世代3Dプリンタ展(2019年2月6日〜8日、東京ビッグサイト)」で、3Dプリンタ用液状シリコンゴム「SILASTIC 3D 3335 Liquid Silicone Rubber」を紹介した。同材料は射出成形品と同等の物性を持つことが特徴で、量産製品にも対応可能だ。 - 高硬度エクストルーダー3種と金属系PLAフィラメント2種を発売
XYZプリンティングジャパンは、同社の3Dプリンタ「ダヴィンチ」シリーズ向けの高硬度エクストルーダー3種と金属系PLAフィラメント2種を発売した。 - 3Dプリンタ用の機能性エラストマー材料とカラー素材、FDMやPolyJet式向けに
ストラタシス・ジャパンは、同社のFDM方式およびPolyJet技術に基づく3Dプリンタ用の機能性エラストマー材料「Stratasys TPU 92A」と、カラー素材「Agilus30 White」「VeroVivid Cyan」を発売した。 - いまさら聞けない 3Dプリンタ入門
「3Dプリンタ」とは何ですか? と人にたずねられたとき、あなたは正しく説明できますか。本稿では、今話題の3Dプリンタについて、誕生の歴史から、種類や方式、取り巻く環境、将来性などを分かりやすく解説します。 - 3Dプリンタはインダストリー4.0の重要なピース?
製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。本連載では、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについてお伝えしています。第14回となる今回は、インダストリー4.0の動きと合わせて再注目されている3Dプリンタの動向とその理由について紹介します。 - 「単なる試作機器や製造設備で終わらせないためには?」――今、求められる3Dプリンタの真価と進化
作られるモノ(対象)のイメージを変えないまま、従来通り、試作機器や製造設備として使っているだけでは、3Dプリンタの可能性はこれ以上広がらない。特に“カタチ”のプリントだけでなく、ITとも連動する“機能”のプリントへ歩みを進めなければ先はない。3Dプリンタブームが落ち着きを見せ、一般消費者も過度な期待から冷静な目で今後の動向を見守っている。こうした現状の中、慶應義塾大学 環境情報学部 准教授の田中浩也氏は、3Dプリンタ/3Dデータの新たな利活用に向けた、次なる取り組みを着々と始めている。