半月板断裂部位への滑膜幹細胞移植技術に関する特許ライセンス契約:医療機器ニュース
富士フイルムと東京医科歯科大学は、半月板損傷を対象とした、自家間葉系幹細胞の移植技術に関する特許ライセンス契約を締結した。富士フイルムは、この滑膜幹細胞を用いた再生医療製品の開発、製造、販売の独占的実施権を取得する。
富士フイルムは2019年3月5日、東京医科歯科大学と、半月板損傷を対象とした、滑膜由来の自家間葉系幹細胞(滑膜幹細胞)の移植技術に関する特許ライセンス契約を締結したと発表した。この滑膜幹細胞を用いた再生医療製品の開発、製造、販売の独占的実施権を取得する。東京医科歯科大学は、同社より契約一時金、開発マイルストーン、売上ロイヤルティーを受け取る。
契約対象となった技術は、同大学再生医療研究センター 教授の関矢一郎氏らが開発。まず、小さな傷口で施術可能な関節鏡を用いて、断裂部位を縫合することで半月板の形を整え、同時に膝関節内の滑膜を採取する。その滑膜から分離した滑膜幹細胞を約2週間培養し、細胞浮遊液を作製して半月板断裂部位に投与する。投与した細胞浮遊液中の滑膜幹細胞が半月板に生着し、修復を促進することで、膝の曲げ伸ばしや立ち上がる際に感じる痛みや引っ掛かり、不安定さなどの改善を図る。
同技術は、施術時の患者の身体的負担を軽減する他、半月板縫合術が適応されない患者に対して、半月板を温存したままで症状の改善が期待できる。また、半月板を温存することで、変形性膝関節症の発症を抑えられる。
今後富士フイルムは、同技術に加え、子会社のジャパン・ティッシュ・エンジニアリングの持つ細胞培養や品質管理に関するノウハウなどを活用し、半月板損傷を対象に滑膜幹細胞を用いた再生医療製品の実用化を進めるとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- エボラ出血熱向けの抗インフル薬、富士フイルムが追加生産を決定
富士フイルムは、エボラ出血熱患者への投与拡大に備え、抗インフルエンザウイルス薬「アビガン錠200mg」(一般名はファビピラビル)の追加生産を決定した。2014年11月中旬より、ギニアで臨床試験を始める予定だ。 - 創薬支援分野参入に向け、iPS細胞開発・製造の米企業を買収
富士フイルムホールディングスは、iPS細胞の開発・製造のリーディングカンパニーである米Cellular Dynamics Internationalを買収すると発表した。今回の買収により、iPS細胞を使った創薬支援分野に本格的に参入する。 - 体内の立体構造をより正確に描出する画像処理技術
富士フイルムは、体内の立体構造をより正確に描出できる、人工知能を用いた新たな画像処理技術を開発したと発表した。乳がん診断において見分けにくかったノイズと微小な石灰化が見分けやすくなるなど、診断に適した高精細なX線画像を提供する。 - “スーパーCCDハニカム”で高画質化、富士フイルムが細径内視鏡を発売
高い挿入性と処置機能、高画質化を実現した下部消化管用処置用スコープ(細径内視鏡)「EC-580RD/M」が富士フイルムから発売される。内視鏡検査や内視鏡下手術の時間が短縮されることにより、医師のストレス軽減や患者への負担軽減に寄与することが期待されている。 - 医療機器のAI活用で期待される画像診断支援、国のゴーサインはいつ出るのか
パシフィコ横浜で2018年4月13〜15日に開催された「2018 国際医用画像総合展(ITEM2018)」。今回は、医療分野におけるAI(人工知能)技術に関する同イベントでの展示内容を中心に主要各社の取り組み状況を紹介する。