エボラ出血熱向けの抗インフル薬、富士フイルムが追加生産を決定:医療機器ニュース
富士フイルムは、エボラ出血熱患者への投与拡大に備え、抗インフルエンザウイルス薬「アビガン錠200mg」(一般名はファビピラビル)の追加生産を決定した。2014年11月中旬より、ギニアで臨床試験を始める予定だ。
富士フイルムは2014年10月20日、抗インフルエンザウイルス薬「アビガン錠200mg(以下、アビガン錠)」を、エボラ出血熱対策として追加生産することを決定したと発表した。エボラ出血熱患者への投与拡大に備えて、海外での使用を目的とする。
アビガン錠は、一般にはファビピラビルと呼ばれ、富士フイルムグループの富山化学工業が開発した抗インフルエンザウイルス薬だが、エボラウイルスに対して抗ウイルス効果を持つというマウス実験結果が公表されている。これまでに、西アフリカから欧州に緊急搬送されたエボラ出血熱患者複数人に対し、緊急対応として投与された。この結果、緊急搬送先の政府機関および医療機関からアビガン錠提供の要請を受け、日本政府と協議の上で、その要請に応えることを決定したという。
2014年11月中旬より、フランス政府とギニア政府が、ギニアでエボラ出血熱に対するアビガン錠の臨床試験を始める予定だ。この臨床試験に対し、富士フイルムは、アビガン錠と薬剤情報提供について、日本、フランス、ギニアの関連当局と連携し協力していくという。アビガン錠の効果および安全性が臨床試験で認められた場合、より大規模な臨床使用のための薬剤提供要請が見込まれるとしている。
富士フイルムは、現時点で2万人分のアビガン錠を保有している他、原薬としてさらに30万人分程度の在庫を持っている。今後、さらなる臨床使用が進む場合に備え、エボラ出血熱向けのアビガン錠の生産を、11月中旬より行う。感染規模がさらに拡大した場合においても十分な量を継続的に供給できるよう、追加生産を行って備えておくべきだと判断したとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 細胞の動きを染色せずに撮影可能、ソニーの医用研究向け画像処理システム
ソニーは研究向けに、細胞の動きを定量評価する画像処理システムを発表した。培養状態の細胞を撮影し、その動画を独自に開発したアルゴリズムで解析する。特殊な培養容器や染色するための試薬などは不要だ。iPS細胞やES細胞を用いた再生医療や、創薬などの研究を加速することが期待できる。 - 医薬品の副作用を予測する新システム、iPS細胞由来の心筋細胞を活用
NEDOのプロジェクトの一環として、LSIメディエンスは、医薬品による心循環器系の副作用を評価するシステムを開発した。ヒトiPS細胞に由来する心筋細胞を活用することが最大の特長だ。ヒトiPS細胞を創薬の分野に生かす取り組みが始まっている。 - “中距離無線”で給電、米粒サイズのインプラントが治療を変える?
米大学が、長さ2mmの体内埋め込み型(インプラント)の神経刺激装置に無線給電する方法を開発した。1.6GHzの電波に変調を加えることで、従来の近距離無線通信では届かなかった体内の深部まで、送電波を届けることに成功したという。インプラントと給電デバイスの両方を小型化できる可能性があり、慢性病などに効果を発揮する新しい治療方法が生まれるかもしれない。